昨季禁止薬物問題に揺れた2人の主砲がPS躍進チームを牽引する皮肉

薬物問題に揺れた2選手が4番を務めるカージナルスとオリオールズが躍進

 光るのは、やはりクルーズとペラルタの活躍だろう。2人に共通するのは、昨オフにFAとなり、新天地に身を置いていることだ。

 出場停止で昨シーズンの後半を棒に振った2人は、オフになると去就に大きな注目が集まった。いずれも古巣のレンジャーズ、タイガースで主力だったが、ダークなイメージが付いた選手を獲得する球団などあるのか、ということが最初の注目点だった。契約にこぎ着けても、厳しい内容になるとの見方もあった。

 しかし、蓋を開けてみれば、ペラルタがオフに入って間もない11月末にカージナルスと4年総額5300万ドル(約58億円)の大型契約を結んだ。ヤンキース、メッツなどとの争奪戦になったことも、カージナルスが好条件を提示したことに影響した。これを受けて、禁止薬物を使わずに真っ当にプレーしてきた選手などが反発。各球団のオーナーを批判する声も挙がり、メディアからもバッシングが起こった。

 一方、昨季は前半戦にオールスターに出場するなどの活躍を見せ、出場停止処分を受けたにもかかわらずレンジャーズからクオリファイングオファー(昨年は年俸1410万ドル)を受けていたクルーズは、これを拒否。4~5年の大型契約を狙っているとの報道もあり、その後、2月中旬に各球団のキャンプが始まってからも所属が決まらなかった。

 ペラルタとカージナルスへのバッシングを受け、各チームが敬遠していたのかは定かではない。ただ、ようやく新天地が決まったのは2月22日。オリオールズとクオリファイングオファーを遙かに下回る1年800万ドル(約8億7000万円)で契約し、キャンプへと合流した。

 シーズンが始まってからの活躍は、前述の通り。結果として、薬物問題に揺れた2人が4番を務めるカージナルスとオリオールズが、両リーグでリーグ優勝決定戦まで駒を進めている。獲得に二の足を踏む球団がある中、両チームの首脳が批判覚悟で勇気を持って手を上げたとも取れるが、あまりにも皮肉な話だ。

 もちろん、2人とも今季は薬物の力に頼らず結果を残しているはず。自らの本来の力を証明するため、そして批判の中でも結果を残すために努力を続けてきたのなら、それは称賛にも値することだ。ただ、禁止薬物排除に向けて今更ながら本腰を入れ始めたMLBにとっては、複雑な結果とも言えるかもしれない。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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