ロイヤルズの快進撃を支える強力な武器 23歳新鋭の衝撃のスピード

代走のスペシャリスト、テランス・ゴアの存在

 スピードはシーズン当初から際立っていた長所だが、9月に入り、さらに一段レベルアップした。その立役者が、代走のスペシャリスト、テランス・ゴアだ。

 2011年ドラフトで20巡目に指名されたゴアは、23歳ながら一見すると高校生とも間違いかねない童顔だ。身長170センチ、体重75キロという小柄な体格だが、その引き締まった体には無駄な脂肪はなく、まさに全身がバネのよう。

「小さい頃から走るのだけは速かったんだ。どうやら家系みたいで、兄貴も走るのは速かったし、甥も速い。何よりも父親が陸上選手だったから、その遺伝子が自分にも引き継がれているのかもしれないね」とはみ出しそうな笑顔を浮かべる。

 今年の4月、ゴアが開幕を迎えたのは1A(アドバンスト)ウィルミントンだった。外野手としてプレーした1Aで残した打率はわずか2割1分8厘。それでも8月になると、飛び級で3Aオマハへの昇格を告げられた。

「自分でもビックリしたんだ。えっ、何で?って(笑)。その時に説明されたのが、9月の優勝争いでスピードが必要になるかもしれない、ということ。3Aでも、足を生かすことに集中して毎日を過ごしたんだ」

 実は、ゴア本人の知らない間に、カンザスシティーでは首脳陣が「ロースター枠が拡大する9月になったらゴアが昇格させる」と宣言していた。すでに「足が速い」という噂は広まっていたが、実際にその姿を見た人は数少ない。半ば都市伝説的な存在となっていたわけだが、9月にメジャー昇格を果たしたゴアの走りに誰もが度肝を抜かれた。

 とにかく速い。ゴアのような右打者の場合、本塁から一塁に到達する平均的な速さは4・3秒とされている。左打者の場合はやや速くて4・2秒。だが、Scout.comによれば、ゴアは本塁から一塁までを3・8秒で走り、一塁から二塁までの到達時間に至っては、たったの3秒だという。

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