鳥谷敬はメジャーで成功を勝ち取れるか 日本人内野手に立ちはだかる「壁」

メジャーリーガー鳥谷は誕生するか

 さて、話を日本人内野手に戻してみよう。日本プロ野球を経た場合、海外FA権を獲得できるのはデビューから9年後。高卒の場合は27歳だが、大卒や社会人を経た場合は、30歳を越えることになる。ここでメジャー移籍を目指した場合、少なからず障害となるのが「年齢の壁」だ。もちろん、メジャー球団が2年600万ドル、3年1000万ドルの契約を結ぼうと乗り気になる実力の持ち主だったら問題はない。だが、他のメジャー選手たちと横一線に並べて比較検討された場合、やはり30歳を越える年齢は得にはならないだろう。

 野手に限らず投手でも、メジャーにやってきた日本人選手が口を揃えるのは「移籍する年齢は若ければ若い方がいい」ということだ。特に、マイナーリーグでのプレー経験を持つ選手は「もう少し若い時に、こういう経験をしたかった」と話すことが多い。実際にプレーする中で、チームの起用方針や評価における「年齢の壁」を感じているからだ。

 マイナーリーグで昇格のチャンスをうかがっていても「若手の実力を見てみたい」と2度3度とチャンスを先送りされることもある。「同じ年齢だったら負けないのに……」という悔しい思いをモチベーションに昇華させ、次のチャンスを待ち続けるしかない。こうやって考えると、現在33歳の鳥谷も「年齢の壁」にぶち当たる可能性は少なくない。

 その一方で、通算2割8分5厘と安定した打撃、人口芝ではない甲子園でプレーし続けた守備を、各球団のスカウトたちが高く評価していることも事実だ。日本人内野手の評価が低い中でのメジャー移籍は、一見すると大きなチャレンジのように思えるかもしれないが、チャンスさえ与えられれば、そこから失うものは何もない。あとは腰を据えて、堅実にプレーをしていけば評価は自ずと上がるはずだ。「年齢の壁」に惑わされず、実力をフェアに評価する球団もある。メジャーリーガー鳥谷の誕生する日を楽しみに待つとしよう。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

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