松坂大輔が見せる復活への自信 その裏側にあるもの

王会長「手術をするとむしろ強くなる」

 右肘の状態はどうなのか。今季、メッツでは先発、中継ぎ、抑えで34試合、83回1/3を投げた。これは術後、メジャーで最も多い数字だった。松坂自身も「手術を受けて3年が経ちました。僕の中では年々状態がよくなっています。今年が一番、手応えを感じていました」と肘の不安を一掃する。

 松坂が受けたのは「トミー・ジョン手術」。アメリカのスポーツ医学の権威である、故フランク・ジョーブ博士が考案した肘の靱帯再建術だ。前腕部や下腿部などから正常な腱を摘出して、患部へと移植するというもの。かつては成功率1%未満と言われていた手術だったが、現在では完全復活する割合は約90%とも言われ、これを受けた選手は日米通じて数多くいる。

 しかも、だ。術後、2、3年が経つと、球速がアップする例も多くあるという。これは、手術で腕が強くなるというわけではなく、回復に向けたリハビリやトレーニングによって、肉体がパワーアップした成果とされているが、松坂は術後2年半が経過。34歳にはなったが、このタイミングで再び輝きを取り戻すことになっても不思議はない。

 ソフトバンクにも、五十嵐やウルフなど、トミー・ジョン手術を受けた投手がいる。王貞治球団会長も、会見の席で「投げている姿からも不安は感じていません。手術をすると丸々2年くらいはかかるけど、むしろ強くなるということを聞いている。ホークスにもそういう投手がいますので、不安は感じていません」と語っている。

 11月に入ってからは、日本の統一球を使ったキャッチボールを始めたという松坂。「アメリカのボールより、やっぱり一回りくらい小さいんだなと思った。マウンドやボールに関しては経験してきているものなので、イメージは簡単に出来る。あまり気にしてはいない」と、9年ぶりの日本プロ野球へ準備を始めている。

 夏の甲子園決勝でのノーヒットノーラン、ルーキーイヤーからのイチローとの名勝負、2大会連続WBCのMVPなど、記録にも記憶にも残る実績を残してきた平成の怪物。ホークスファンはもちろん、他球団(さらに言えば、古巣・西武)のファンでさえも心のどこかで期待していないか。松坂大輔が完全復活することを――。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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