野球殿堂に4人選出もボンズ氏らはまた落選 論争続く禁止薬物使用の是非

MLBが確固たる姿勢を示さなければ、今後も混乱は続く?

 現在でも、アンフェタミン系の薬物アデロールは注意欠陥障害(ADD)や注意欠如多動性障害(ADHD)の処方薬と認められているため、昨シーズンは112選手がMLB機構から使用許可を受けていた。オリオールズのクリス・デービスが、アデロールの服用許可を申請していなかったために25試合の出場停止処分を科されたことは記憶に新しいだろう。

 使用許可はMLBが定めた厳重な規定に基づいて与えられているが、昨季の112人という数字はメジャー40人枠に登録された選手の約9・9パーセントに当たる。その一方で、一般成人でADDやADHDと診断されている人の割合は約4・4パーセントと言われており、野球選手はその倍にも及ぶ事実がある。となると、アンフェタミン系の薬物を使用したことのある人物は殿堂入りができて、ステロイド使用の疑惑がかかる人物は殿堂入りできないのか、という論理が生まれてしまうわけだ。

 今年は、マイアミの治療院バイオジェネシスに端を発する薬物スキャンダルで1年戦列を離れていたアレックス・ロドリゲスが復帰する予定だ。この事件に関わったジョニー・ペラルタ(カージナルス)やネルソン・クルーズ(マリナーズ)らが出場停止処分後に大型契約を結んだことに対しても、さまざまな意見が飛び交う。

 おそらく、彼らが引退して殿堂入り選手候補の資格を得る頃にも、同じような議論が続けられているだろう。その時の混乱を少しでも緩和するためにも、五輪競技に比べて禁止薬物使用に対する罰則が甘いと言われるMLBは、改めて薬物使用禁止に対する確固たる姿勢を示さなければならないのかもしれない。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

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