【パ×Full-Count】球界活性化へ パ・リーグのデジタルメディア戦略が秘める可能性

今季さらなる進化を遂げる「パ・リーグTV」

 私たちが運営する「パ・リーグTV」も昨年から15種類のデータを調べながらライブ観戦できる仕組みを整えましたが、お客様からのありがたいご意見もあり、今年からはデータの種類を3倍以上の50種類とします。より深く、様々な視点でのライブ観戦を可能とさせる予定です。その際にただ種類を多くするだけではなく、グラフの出し方を直感的・視覚的に分かりやすくする工夫をする計画です。

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「パ・リーグTV」は2015年からデータの種類を3倍以上に増やす【画像提供:PLM】
※画面は開発中のもの

 さらに今年からの新しい取り組みとしては、ゲーム機能を追加しようと思っています。例えば、試合の勝敗やヒーローインタビューの対象選手を予測してみたり、打席毎の結果を予測できるようなゲーム機能を設ける予定です。それにより、ただ単に野球観戦を楽しむだけではなく、試合のライブ映像を中心として試合そのもので起きていること全てを楽しめるようになるでしょう。

 これらの機能は開発陣には無理を言って、スピード優先で2015年開幕までにはローンチしたいと考えています。デジタルメディアのサービスは60点でも70点でもよいので、スピード優先で世の中に出すことがまず重要。サービスを実施しながらお客様のご意見を取り入れて改善して行けばよいというスタンスをとっています。昨年、MLBAMへ打ち合わせで行った際に、たまたま先方責任者が全く同じことを話すのを聞いて、スタンスに対する確信をますます深めました。

 前述のようなデータやゲーム等の機能を試合ライブ映像に追加することにより、より多様化するお客様の野球観戦ニーズに応えていけるのではと考えています。例えば同じ1人のお客様でも、利用するデバイス(PCかスマートフォンか)や利用シーン(自宅か職場か球場か)によって、野球観戦を楽しみたい方法は変わるはずなので、とにかく受け皿、品揃えだけは多く準備をしておきたいと考えています。もちろん従来のように野球そのものだけを楽しみたいお客様には、野球そのものだけを楽しめる機能を用意しています。

 現在「パ・リーグTV」の会員数は年々増加しているものの5万人台後半であり、今年は6万人を目指していきますが、パ・リーグファン全体の母数(1,600-1,800万人)と比較するとまだまだ小さいマーケットです。逆に言うと、まだまだ伸びしろがあるマーケットであり、今後のさらなるITサービスの技術革新を考慮すると、やりがいのある事業領域だと考えています。そのためには明確なゴールとターゲットの設定、スピード感が必要となります。

 また「パ・リーグTV」のようなネット動画事業と合わせてフォーカスしていきたいのが、SNS(ソーシャルネットワーク)での情報発信です。特に若年ファンを新規開拓していくためには必要なツールだと考えており、プロ野球の強みのひとつであるライブエンターテインメントとの親和性や拡散力が期待されます。

 従来はリーグと各球団が個別に運営している事業領域ですが、今後はナレッジやノウハウ共有を図っていくために、リーグ事業会社にもSNS専任スタッフを配置します。また試合ライブ時の映像編集やデータ入力と合わせて業務効率化とコンテンツ付加価値化を図るために、従来バラバラの場所で行っていたオペレーションを1カ所に集約するプランもあります。

 まずはファンの皆さまに楽しんでいただけるサービスを数多く揃えて支持していただき、ヒト・モノ・カネのリソースを整備しながら、さらに新しいサービスのための投資をおこなっていく事業サイクルを回して行こうとしているのが現在のステータスです。

 2007年の会社創立時には1.8億円だった売上が、2015年は約9倍の16億円超を目指すレベルまでなってきており、MLBの成長規模と比較するとまだまだ小さいものの、今後はやり方次第で大きな広がりを見せる可能性を秘めています。野球の本質的価値を踏まえたうえで、さらなる事業拡大を推進しながら、ファンの皆さまに喜んでいただけるようなサービス提供をし続けることがミッションを実現できる手段であると考えています。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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