【小島啓民の目】縦カーブ習得に要したのはわずか2日 大瀬良の成長の裏にある「学ぶ姿勢」

力任せに投げるスタイルだった学生時代の大瀬良

 球の速さ、変化球のキレなど素質の素晴らしさが大学生の域を超えていることはその当時から誰もが認めるところでした。ただ、改めて合宿に招集した際に、試合の中での投球に対する考え方は、まだまだ大学生だなと正直感じました。若い投手にありがちな、「速い球を投げたい」と力任せに投げるスタイルとでも説明しておきましょう。

 アマ代表チームの合宿は、2~3日程度の期間で、大会までに2度ほど行うというスケジュールですから、それほど深く指導はできません。よって指導者側は「大会までに少しでもスキルアップをしなければ」と、選手に的確なアドバイスを行う必要があります。

 私はその中で彼への指導を始めました。触れ合ってみて感じたのは、大瀬良選手の性格の良さでした。これは野球で触れ合った人なら誰もが認めるところではないでしょうか。高校、大学と指導を行われた指導者の育成の賜物であり、さらに家庭における躾の良さであることは間違いないでしょう。人の話を聞く態度、さらに先輩方に積極的に質問する貪欲な姿勢は特に印象に残っています。

 大瀬良選手と言えば、150キロ越えの速球とスライダーが武器。しかし、この2球種だけでは、長いイニングを投げきるのははかなり苦しいはずで、速球系に強い海外選手との対戦においてはなおさらです。

 そこで、私は緩い変化球、つまり「縦のカーブ」の習得を彼に課しました。すると「大学時代にほとんど投げたことがありません。」ときっぱりと言ってきました。大学レベルであれば抑えるには必要なかったボールだったのでしょう。珍しく不満顔でしたので、あまり乗り気でなかったのは確かです。

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