インディアンス内で勃発した“仁義なき戦い” 世界一監督の意外な一面とは

「まだ残り3週間ある」、指揮官が見せた“執念”

 一杯食わされた監督とベンチコーチは、誰かに仕返しをしようと、ターゲットを探すために、クラブハウスの周りをゴルフカートで見回ることにした。すると、飛んで火に入る夏の虫。スカウト部門のディレクター補佐を務めるビクター・ワン氏の姿を見つけると、水入り風船をぶつけるために、ゆっくりそばに近づいた。その瞬間、フランコーナ監督の頭上から滝のような水が降ってきた。何事かとクラブハウスの屋上を見上げると、そこで大笑いしながら勝利の雄叫びを上げていたのは、なんとクリス・アントネッティGMだった!

「もうずぶ濡れもいいところだ。フロントオフィス陣は、復讐のために一日中計画を練っていたらしい。だから、マイク・シャーノフ(GM補佐)に言ってやったんだ。『超名門のプリンストン大学出身だろ。こんなことしか思いつかなかったのか?』ってね(笑)」

 フロントオフィス陣に見事リベンジされた監督は「手も足も出なかった。頭のよさは断然向こうが上だ」と、この時ばかりは潔く負けを認めたようだが、ミルズ・ベンチコーチをはじめコーチ陣に向かって、いたずらな笑みを浮かべながらこう告げたそうだ。

「まだ残り3週間ある」

 この執念があったからこそ、レッドソックス時代に2度世界一に上り詰めたのだろうか。何はともあれ、インディアンス内で勃発した現場とフロントオフィスの仁義なき戦い。しばらく続くことになりそうだ。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

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