記録よりも危機感 “9連続K”西武岩尾のシンデレラストーリー

優しすぎる男に備わった覚悟、指揮官も右腕の成長を実感

 7回1死一、二塁。「記録を知らなかった」というレアードを迎えた。生存競争が頭の中を占める岩尾は「三振よりも、とにかく走者を返さないようにと思った」と記録は頭になかった。スライダー、そしてフォークのように縦に鋭く落ちる自称ツーシームで追い込むと、3球勝負のツーシームで空振り三振。参考記録ではあるが、1950年代の記録である「9連続三振」に並んだ。

 ツーシームは2年前に渡辺SDに「フォークを投げてみろ」と言われたのをきっかけに修得した。「指が短いので挟めなかった」と苦闘したが、幅を狭めて縫い目に掛けるように投げたら落ちるようになったという。

 また昨年7月のイースタンリーグ・ヤクルト戦では7回19安打13失点という屈辱を味わった。直後はショックから抜けきれなかったが「これだけ打たれたらチャンスは残り少ない。だったら思い切りやろうと」と開き直った。優しすぎる男に覚悟が備わるようになった。

 快挙から2日後、岩尾はソフトバンク戦で同点の延長10回に投入された。大差のついた場面という役回りから、ついに昇格した。「ちびりました」とドキドキのマウンドは2死満塁で3ボールと絶体絶命のピンチに追い込まれた。ベンチも押し出しを覚悟したが、そこから際どいストライクを2球続け、最後は投ゴロに仕留めた。

 勝負どころで投入した田辺監督は、ピンチの場面もベンチでなぜか笑顔だった。実は思い出し笑いだったという。「(コーチだった)2軍の時から見ているからね。あんなにヒョロヒョロだったのに、こんな場面で投げる投手に成長したんだなと」。シンデレラボーイ岩尾の名前は確実に広まりつつある。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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