「プロに来て良かった」――ほろ苦デビューから1か月、ロッテ田中英祐の思い

吹っ切れたような明るさを見せる田中と、二軍コーチ陣が指摘する課題

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ロッテ浦和球場で練習に励む田中【写真:長谷川美帆】

 プロ初登板から約1か月。二軍の本拠地であるロッテ浦和球場で練習に励む田中の表情は、どこか吹っ切れたように明るかった。落ち込んでいる時間はない。実戦経験を重ねながら、現在の最重要課題として挙げるのは体力強化。二軍投手コーチを務める小谷正勝コーチと川越英隆コーチは「瞬発力はあるが、持続力が課題」と、そろって話す。

 マウンドで良いパフォーマンスを出す確率を上げるためには、筋力トレーニングや肩のスタミナ強化は必要不可欠だ。また、デーゲームを終えて寮に戻ったあとは一軍の試合中継を観ることも欠かさない。相手打者や配球に注目し、どのような投手が一軍で活躍しているのかを研究する。些細なことでもいい。すべては自分のピッチングに取り入れるためだ。

 人生と真剣に向き合い、悩みに悩んで決断したプロ野球選手という道。一生に一度のデビュー戦は、確かにほろ苦いものだった。それでも、あの日の忘れられない光景が、自分の選択を少しだけ肯定してくれたように思えた。

「初めて一軍のマウンドに立った瞬間、“プロに来てよかった”。そう思いました。あれだけ多くの人に応援してもらいながら投げるのは、すごく嬉しいこと。悪い結果になってしまったけれど、この失敗をしっかりと生かしたいです」

 長いプロ野球人生は始まったばかりだ。応援してくれる人たちのためにも、必ず一軍の舞台で躍動してみせる。もう一度、この先何度でも、胸に焼き付いているあの光景を目指して。ぶつかった高い壁を乗り越える田中の姿を、楽しみに待ちたい。

【了】

長谷川美帆●文 text by Miho Hasegawa

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