戦力外覚悟の力投、メジャーで“居場所”守る和田毅のシビアな本音

「ダイエーにいた時もローテ入りした頃は先輩方と入れ替わる形だった」

「マイナーリーグにはメジャー昇格のチャンスを狙う若手がたくさんいる。調子のよくないベテラン選手がいれば、使えそうな若手を試してみた方が、未来につながることだと思うんですよ。勝つことを目的とするビジネスだったら、それが正しいやり方。メジャーでは、マイナーリーグの数が多い分、代わりとなる選手がたくさんいるから、競争が激しいように見えるけど、それは日本でも同じ。若手でもベテランでも関係ない。自分の立場が保証されることはないですよ。

 ダイエーにいた時も、僕や杉内(俊哉)、渚(新垣)がローテ入りした頃は、田之上(慶三郎)さんや永井(智浩)さんといった先輩方と入れ替わる形だった。今、僕が成績を残せなかったら、別の投手を起用するのは当然の流れですよね」

 もちろん、ビジネスとしての野球のあり方を理解しているとはいえ、自分の立場を易々と手放すほどお人好しではないし、まだまだ若手に負けないだけの自信がある。今季6戦目にして手に入れた7回無失点の白星も「四球を2個出してしまったことが、自分としては悔しかった。そこをもっと詰めていければ、球数少なく8回まで投げられたかもしれない。反省点はある」と手放しで喜ばなかったのも、もっといいパフォーマンスができるという自信の裏付けだ。

 和田自身も繰り返し言っているが、大切なのは次戦の内容だろう。単なるまぐれだったと言わせないためにも、先発ローテの一角として、さらなる信頼を勝ち取るためにも、1戦1戦、危機感を持ったまま投げ続けることがカギとなるのかもしれない。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

佐藤直子 プロフィール

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

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