最後まで信念を貫いた中日・山本昌 ブレなかった“引き際”への考え方

自身を「古いパソコン」と評していた大ベテラン

 レジェンドの名に恥じない幕引きだった。中日の50歳左腕・山本昌投手が今季限りでユニホームを脱いだ。

 来季も現役続行となれば、ジェイミー・モイヤーの持つ49歳180日のメジャー最年長勝利記録の更新がかかっていた。しかし、8月に左手人さし指を負傷。快挙達成に向け、復活への歩みを進めていた中での突然の決断は、世間に大きな驚きを与えた。

 谷繁、和田、小笠原らベテランの引退ラッシュもあったが、以前から抱いていた“引き際”への考え方にブレが生じたわけではない。昨年までも、現役続行か引退かの判断基準に置いていたのは、記録ではなく戦力として貢献できるか。それも「先発」という形に大きなこだわりを持っていた。

 山本昌はよく、自身を「古いパソコン」と評する。「電源を落とすと、起動するのに時間がかかるから」という理由からだ。その調整法は独特。シーズン中はもちろん、年末年始ですら1日も体を休めることはしない。継続して体を動かし続けることで、パソコンに例えるならば「スタンバイ」状態を保ってきた。

 だが、近年は球速や体力とは別の面から衰えを感じるようになった。これまで考えられなかった形での故障が増え、自身の感触よりも復帰に時間を要するようになった。走り続けることにより、ぎりぎりでコンディションを維持してきた大ベテランにとって、何度も待ったをかけられる不安やストレスは相当なものだったはずだ。

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