WS進出球団に見るメジャーのトレンド 「自家栽培・自給自足」の時代へ

メジャー全体が新たなマネージメント術に移行

 どちらの場合もカギとなるのは、地道かつ卓越したスカウト活動と、選手が持つ才能を十分に開花させる育成システムだ。

 アマチュア界に潜むダイヤの原石を発掘する時も、即戦力となる人材をトレードで獲得する時も、スカウトの見立てが間違っていれば機能しない。将来有望な逸材と契約しても、育て方を間違えればメジャーで日の目を見ないこともある。球団を構成するピラミッドの土台部分=ドラフトや育成システム、傘下マイナーを強化することで、頂点に立つメジャーが安定した戦力を長期にわたって維持することができる、というわけだ。

 今季プレーオフに進出したチームを見ても、アストロズ、カブス、パイレーツ、カージナルスは同様の手法を採用している。いずれのチームの場合も、新GMに代替わりした後で新システムを構築し直す「チーム再建期」を経て、現状までたどり着いた。

 かつてのヤンキースに代表されるように、潤沢な資金をFA市場に投資して勝てるチームを作る方法から、メジャー全体が新たなマネージメント術に移行しつつある。基本はすべて自家栽培で経費節減。そこで浮いた費用を投資して、不足した戦力をFA市場やトレードで獲得する。しばらくは、このトレンドが続きそうだ。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

佐藤直子 プロフィール

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

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