育成力が混セを抜け出すカギ? 結果出したヤクルトを他球団はいかに追うか

少し心配なヤクルトの次々世代の野手、結果が求められるピーク間近の広島

 ヤクルト、広島、DeNAの3チームは25歳前後に主力選手が多く存在することから、既に世代交代を完了させたと見てよいだろう。この3チームは直近10年間で下位に沈むことが多かったため、目先の成績にとらわれることなく野手育成を行えたという事情もあるのかもしれない。次の10年間は巻き返しの時代にしたいところだ。

 山田哲人、中村悠平、川端慎吾ら2010年前後に獲得した高卒野手の育成に成功し、ヤクルトは世代交代を上手く完了させたばかりの状態だった。チームが14年ぶりの優勝を決めた背景には、彼らの活躍があったことは周知の通りである。

 ただし、二軍では若手野手が枯渇状態となっているようだ。相次ぐ若手野手の台頭を受け、首脳陣はドラフトの方針を近年では投手中心に切り替えており、そのしわ寄せが来ている状態になっている。加えて夏頃は故障者が続出したため、昨年引退した阿部健太が育成選手登録され、野手として二軍数試合に出場する事態も発生した。

 育成する場所として二軍をとらえたときに、こうした事態が及ぼすチャンスロスの大きさは計り知れない。パ・リーグにおける西武と同じく、野手を重点的に指名する年をそろそろつくってもよいのではないだろうか。

 広島の一軍は、ヤクルトと同じように世代交代を完了させたばかりの状態になっている。ただし、働き盛りの年齢に主力選手が集中している点が異なっており、これはチーム全体の力が頂点に近づきつつあることを意味している。

 野手育成の観点から見ると、現在は言わば「収穫期」に当たる期間であるのに加えて、他球団が世代交代でつまずいている状況は大きなチャンスと言える。チームは四半世紀にわたり優勝から遠ざかっているが、そろそろ負の歴史を断ち切りたいところだ。

 DeNAは全打席の3割以上を25歳以下の若手選手に割り当てており、若手を中心とした戦力編成への切り替えを推し進めるチームの方針が確認できる。近年では金城龍彦、多村仁志、中村紀洋、鶴岡一成ら高齢選手の退団が目立つのも、この方針と連動していると考えられる。

 若い選手で構成されるチームの脆さが出たのか後半戦に打線が大きく得点力を落とし、結果的にこれがチームの低迷に繋がってしまったが、今シーズンは「目先の勝利は狙わず、育成に徹するフェーズ」だったことを考えれば、前半戦を首位でターンできたことは大きな意味を持つと言える。

 チームの年齢層を考えると、まだまだチーム力の上積みが期待できる状況であるのは間違いない。筒香嘉智、梶谷隆幸ら次世代を担う強力な若手野手も台頭している。チームが「収穫期」を迎える数年後に期待したいところだ。

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DELTA・竹下弘道●文 text by DELTA TAKESHITA,H

DELTA プロフィール

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート4』を3月27日に発売。算出したスタッツなどを公開する『1.02 – DELTA Inc.』は現在ベータ版を公開中。

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