前田健太の獲得には120億円が必要? 移籍への鍵となるFA市場の現状とは

現時点で前田獲得の可能性がありそうな球団は?

 この中でも、チェン、クエト、リークは頭一つ抜けた存在である上、クエトとリークは契約すると来季上位ドラフト権を失うクオリファイングオファーの対象ではない。年俸は単年あたり1500~2000万ドル(約18億~24億円)となっても比較的“お買い得”な選手であるため、獲得を目指す球団は多い。

 前述の選手の中で、契約を結ぶと来季上位ドラフト権を失うクオリファイングオファーの対象となっているのは、チェン、ガヤード、ケネディの3人だ。近年はドラフト重視の傾向にあるため、上位ドラフト権の喪失に二の足を踏むチームが多く、対象となる選手が契約交渉を行う際に足かせになるパターンも見受けられる。だが、メジャー4年のキャリアで安定した成績を残してきた左腕チェンの場合、他の2投手よりも評価は高く、早めに移籍先が決まりそうだ。

 ダルビッシュ有(レンジャーズ)、田中将大(ヤンキース)ほどのインパクトはないが、卓越した制球力が売りとされる前田の場合、メジャー各球団のスカウト評を総合すると、「よければ先発3番手、4~5番手で計算しておいた方が得策」。となると、おそらく年俸は単年あたり1000~1500万ドル(約12億~18億円)が相場と見られる。

 これまでの傾向では、ポスティングシステムで移籍した投手は5~6年契約を結んでいるので、年俸総額は6000~9000万ドル(約72億5000万~109億円)になるだろう。年俸だけを考えれば、現在バブル期にあるメジャーでは、そこまで大きな買い物とは言えないかもしれないが、前田の場合、最大2000万ドルの譲渡金を支払わなければならない。すべてを合計すると、およそ1億ドル(約121億円)前後の資金が必要になる。これだけの資金を持つ球団、またこれだけの資金を先発3番手に支払える球団は限られることになりそうだ。

 現時点で、前田獲得の可能性がありそうなのは、ドジャース、マリナーズ、レッドソックス、カージナルスといったあたりだろうか。先発補強の必要なジャイアンツ、パドレス、エンゼルス、ヤンキース、ブルージェイズも可能性は否定できない。

 交渉期間が終わる米国東部時間1月8日を前に行き先を決めるのか、期限いっぱいまで迷うのか。その動向から目が離せなくなりそうだ。

【了】

佐藤直子●文 text by Naoko Sato

佐藤直子 プロフィール

群馬県出身。横浜国立大学教育学部卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーとなり渡米。以来、メジャーリーグを中心に取材活動を続ける。2006年から日刊スポーツ通信員。その他、趣味がこうじてプロレス関連の翻訳にも携わる。翻訳書に「リック・フレアー自伝 トゥー・ビー・ザ・マン」、「ストーンコールド・トゥルース」(ともにエンターブレイン)などがある。

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY