潮崎コーチも「風格感じた」菊池雄星、変貌遂げる左腕は今年何が違う?

田邊監督「ある意味、今季は雄星と心中だよ」

 降板後、普段であれば、アイシングをしながらベンチで大人しくその後の戦況を見守るのが常だが、さすがにこの日は違ったと言う。「3-3になって、9回裏の攻撃の時は、叫びまくってました。『僕の勝敗は一切関係ない』って思ったのは初めてかもしれません」。ただただ、純粋にチームの勝利だけを願って、力の限り声を張り上げた。

 メヒアのタイムリー打で逆転サヨナラ勝利が決まった瞬間、背番号『16』の胸に真っ先に去来したのは、「ホッ」という安堵感だったという。

「肩の荷が下りた、という感じ。監督やコーチから『チームに勢いをつける投球をしてくれ』と言われていたので、結果として勝てたことで、その役割を果たせたという達成感はあります」

 昨季、CS出場権がかかるゲームなど、何度かチームにとって重要な試合の先発マウンドを託されたが、いずれも勝利をもたらすことができなかった。「悔しい気持ちがすごく強くて、『もっと成長して見返したい』という思いをずっと持って、昨年オフから努力してきました。『大事な試合には雄星』と言ってもらえるように、結果を出したい」と、開幕戦を前に語っていた。その言葉に十分値する好投だったと言えよう。

「ある意味、今季は雄星と心中だよ」

 冗談半分とはいえ、田邊監督はそれほどまでに7年目左腕の飛躍を信じ、期待している。

 開幕戦以上の刺激を得るには、CS、そして日本シリーズのマウンドに立つしかない。だが、今回の投球を続けられれば、必ず好成績が残せるはずだ。まだ見ぬ“快感”を味わうために、そしてチームの、指揮官の悲願を達成するために、今の確かな手応えを信じてブレずに前進できるかがカギだろう。

【了】

上岡真里江●文 text by Marie Kamioka

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