「米国流」開幕前後の恒例行事が持つ意味とは?
チャリティー要素が強いメジャーのイベント
一方、メジャーでこういったイベントはないのかというと、そういうわけではない。だが、どちらかと言えばチャリティー要素が強く、マイナーのディナーとは違った印象を受けた。
長い歴史を誇るシカゴ・カブスがシーズン開幕後に開催する「BRICKS AND IVY BALL」というチャリティーイベントがある。そこにはファンはもちろん、地元著名人、ビジネスリーダー、そして博愛主義者たちが参加費600ドル(約6万8000円)を払って参加する。このイベントは1986年に設立された「カブス・チャリティーズ」が主催となり、設立当初から地元NPO団体や子供を支援する団体、そして環境に恵まれない家族への寄付を続けてきている
会場もシカゴの観光名所であるレクリエーション施設にある大踊踏室で、非常に華やかな場となる。参加者はドレスアップし、カクテルを片手にイベントを楽しむ。目的はマイナー球団のイベントと類似しているものの、サイレントオークションが行われるなど、参加者にとってもイベントに訪れることが一種のステータスであるような催しだ。
この両方を経験して感じたのは、明らかな場の雰囲気の違いだった。言うまでもないが、動く額も比べ物にならない。
日本ではシーズンに向けて決起集会をすることでチームが一つとなり、出陣式ではファン、そしてメディアに向けてお披露目をする。一方米国ではメジャーとマイナーでも開幕前後の行事はそれぞれ違った意味合いを持っている。メジャーでは地元企業であったり、ビジネスリーダーであったり、街の経済を支えるパートナーと交流を深めるチャリティーイベントの場となる。マイナーでは地域を大切にし、応援してもらうために地元の人々と選手との交流の場が設けられる。
開幕前後の行事は、ファン、そして地域とのコミュニケーションを図るものとなる。私が経験したものはごく一部の球団だが、これが開幕前後ではメジャーリーグ球団が存在する30の都市、そしてマイナーリーグ球団が存在する都市の多くで開催されているだろう。
通訳として参加させて頂いたこれらのイベントは、仕事としては一番多忙を極める時間だった。なぜなら通訳の対象が1人ではなく、多数になり、それぞれが違った話題を投げかけてくるからだ。それでもシーズン前後にこういったイベントにスタッフとして参加することで、改めて球団が地域に存在する意義の大きさを感じることができた。
(記事提供:パ・リーグ インサイト)
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「パ・リーグ インサイト」新川諒●文