ビシエドとバンデンの実力は? ホーナー&郭泰源との比較で見えてくるモノ

郭泰源の13連勝とバンデンハークの14連勝の内容は?

 昨季から途切れることなく勝ち続け14連勝を達成したバンデンハークを見ていて思い出したのは、87年から88年にかけて、やはり2年にまたいで13連勝した郭泰源(西武)だ。バンデンハークが更新した外国人投手による連勝記録の前の保持者としてメディアで紹介されたこともあり、日本で最大級の成功を果たした台湾人投手の快投を、懐かしく思い起こした方もいるのではなかろうか。

 郭は2014年までソフトバンクの投手コーチを務めており、2015年に入団したバンデンハークとはすれ違いとなっているのだが、そんな縁もある2人の連勝を比べてみたいと思う。

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西武・郭泰源の記録した13連勝

 郭の13連勝は16試合という短い試合数で達成されている。バンデンハークの14連勝に要した22試合に比べかなり短い。驚かされるのは、16試合のうち13試合で完投していたことだ。当時は投手の分業制が今日ほど確立されていなかったことの影響が大きいが、中6日の一定間隔もほぼ守り、安定した稼働を見せている。

 郭の細かいスタッツで目を引くのは、球数が非常に少ないことである。16試合のP/IP(Pitches Per Innings Pitched:1イニング当たりの投球数)は13.67。9回を120球あまりで投げ切るペースで、16試合投げ続けていたことになる。これは高い制球力を武器に1990年代から2000年代にかけてメジャーの第一線で活躍し、355勝を挙げて殿堂入りを果たした“精密機械”グレッグ・マダックス(アトランタ・ブレーブスほか)のような数字だ。球数が確認できる現役晩年の2002-2008の数字ではあるが、マダックスはすべてのシーズンのP/IPが13点台であった。

 郭といえば150km/hを超える快速球や、それに迫る速度のスライダーなど、打者をねじ伏せるボールの使い手というイメージもあったのだが、実際は奪三振、与四球いずれも少なく、打球を打たせて、それを安定的にアウトにしていくピッチングも見せていたようだ。

 88年4月17日の日本ハム戦で146球を投げて完投すると、中5日で回ってきた次の登板では、ロッテを相手に9回86球で投げきり、無四球1奪三振で完封勝利を挙げている。P/IPは9.56という驚異的なものだった。

 また5月21日の日本ハム戦では、西崎幸広と投げ合い12回を187球で完投。中6日で迎えた近鉄戦では、9回を108球で投げきり、1四球5奪三振で完投勝利。さらに中6日の阪急戦も、114球で完投している。

 球数がかさんだ試合の後などは、力で押さずに省エネ投球を見せる柔軟なスタイルが、郭の連勝を支えていたようだ。当時同じパ・リーグで最強打者として君臨していた落合博満(現中日ドラゴンズGM)ですら「打てないと思った」と振り返る郭だが、そのすごさは、コンディションに合わせたやりくりの部分にもあったのではなかろうか。

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