“生みの親”が時代に逆行? カブスが守備シフトをほぼ使わず地区首位独走

制球力の高い投手陣に守備シフトは不要

 では、なぜカブスはシフトを敷かず、通常の守備隊形を採用しているのか。記事では、その大きな要因の一つとして、カブスの先発ローテが制球力の高いベテランで構成されている事実を上げている。今季すでに12勝のアリエッタ、世界一経験を持つ左腕レスターをはじめ、右腕ハメル、ラッキーを含めた4人は、いずれも30歳を越えたベテランで、制球よく打たせて取る投手として知られている。彼らはタイミングをずらしたり、バットの芯を外して「球足の弱い打球」を打たせることを得意としているが、守備シフトは「思い切り振りきった打球」をアウトにするために考え出されたもので、基本のコンセプトが合わないという。だから、シフトを採用するのではなく、通常の守備隊形の方がアウトを取りやすい、というわけだ。

 さらに、記事ではカブスのセオ・エプスタイン球団社長の興味深い見解も紹介している。「シフトは、上手くハマらなかった時、普通の打者を実力以上の巧打者にしてしまうリスクがある。(シフトは)守備に大きな穴を開けて、いい打者にフィールドを広く使うように勧めているようなもの」とし、打者にシフトを出し抜く頭脳的な打撃を開眼させる危険性があるとしたそうだ。

 通常の守備隊形を敷くカブスは、今季非常に高い守備力を披露。記事によれば、7月4日現在、カブスはインプレーになったボールの72.5パーセントをアウトに仕留めている。これは、1975年のドジャース以来となる高数値だそうだ。インプレーになったボールの被打率は.261で、これは1982年パドレスに次ぐ低さだというデータも紹介している。
 
 時代に逆行しているのか。あるいは時代を先取りしているのか。守備シフトの“父”自らシフト採用回数を減らし、守備力の高いチームを作り上げている事実は興味深い。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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