金本監督が求める阪神鳥谷の長打力 新しい打撃アプローチは不振の要因か

今、阪神が鳥谷に求めるべきものは何なのか?

 今季の鳥谷は本塁打数が既に昨季に並ぶなど、ハイペースで本塁打を放っている。しかし打撃成績全体の落ち込みを見ても、このモデルチェンジが成功しているとは言いがたい。現状はデメリットのほうが大きく出ている。

 35歳のベテランになりながら、チームの要求に応えるべくモデルチェンジを試みる姿勢は賞賛されるべきだろう。しかし、自らの特性を生かし作りあげられたスタイルを変えることは簡単ではなかった。もう5年間2ケタ本塁打を記録していなかった鳥谷が、突如20本塁打を目指すという方針は、様々な歪みをもたらしている可能性が高い。

 どんな球をスイングしまた見逃すかといったアプローチや、どんな方向にどんな打球を打つかといった特性は、打者固有のものであることが多く、簡単に調整が効かないことも多い。成績を伸ばそうと、そうした部分に変化を加えた結果、自らの強みを消してしまうというのはよくあることだ。

 鳥谷はスイングの傾向などを見る限り、アプローチについては調整が上手いタイプの打者ではあるだろう。しかし、積極的にストライクを振り、さらには引っ張っていく打撃スタイルでは、今のところ新たなヒットゾーンをつくりだせていない。

 首脳陣は、キャリアの終わりが近づく選手については、何を失い何を残しているかを的確に把握し、最も効率よく貢献させるための策を考える必要がある。しかし残念ながら、今の鳥谷については、求めるべきものを求められていないように映ってならない。

(今季のデータはすべて7月7日終了時点)

【了】

DELTA●文 text by DELTA

DELTA プロフィール

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1~4』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『Delta’s Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。最新刊『セイバーメトリクス・リポート5』(http://www.amazon.co.jp/dp/4880653845/)を2016年5月25日に発売。集計・算出したスタッツなどを公開する『1.02 – DELTA Inc.』(http://1point02.jp/)もシーズン開幕より稼働中。

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