サブローが泣いた日 思いがけない涙と忘れられない助っ人の言葉

嬉しかった助っ人の言葉、「サブロー、オマエがMVPだよ」

 しかし、思いを乗せたボールは無情にもファウルゾーンに上がった。気が付けば、力ない打球がドームの天井に向かって飛んでいた。二邪飛。4番として最低限の仕事すらできなかったことが悔しくもあり、情けなくもあった。今までやってきたことはなんだったのか。そう思うと目頭が熱くなった。ベンチ裏に下がると、誰も見えないところで一人、涙した。しかし、まだゲームが終わったわけではない。気持ちを入れ直すと、仲間たちが逆転してくれることを信じてベンチに戻り、声を張り上げて応援した。

 願いは届いた。その直後に里崎が左中間フェンス上段に直撃する逆転の2点適時二塁打を放ち、9回に守護神の小林雅英(現1軍投手コーチ)が締め、マリーンズナインが歓喜の胴上げのため、ベンチを一斉に飛び出した。右翼を守っていたサブローは外野手同士で抱き合った。すると涙が止まらなくなった。

「あそこで泣くなんて考えてなかったよ。メチャクチャ喜ぼうと思っていた。それなのに大塚さん(現2軍外野守備走塁コーチ)が柄にもなく泣いていた。あの人もこの試合で2三振。お互い苦しかったなあと思うと自然と涙が出てきた」

 マウンドに向かうと、フランコ、セラフィニの外国人コンビに言われた。「サブロー、オマエがMVPだよ」。この試合は4打数無安打。しかし、助っ人たちは分かっていた。シーズンで4番として、時にはつなぎ、時には決勝の適時打を打ち続けてきた男。サブローこそが、優勝へと導いてくれた主砲だったことを。

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