キューバ亡命のマ軍急逝右腕が残した言葉「自由が本当に意味すること」

ボートに乗ってキューバを脱出、溺れる母を救助しながら4度目で成功

 25日早朝(日本時間同日午後)に起きたボート転覆事故で急逝したマーリンズのホゼ・フェルナンデス投手について、記者会見に出席したサムソン球団社長は「彼が歩んだ人生は、希望を象徴するストーリーだった」と涙ながらに語った。

 知人2人と乗ったボートがマイアミビーチ付近にある岩の突堤に激突し、24歳という若さで逝去したフェルナンデス。キューバで生まれ育った右腕は、メジャーリーガーになりたいという夢を追い、何度も亡命を試みた。小さなボートに鈴なりの人の山。文豪ヘミングウェイが住んだフロリダ州キーウェストからキューバまでの距離はわずか90マイル(約145キロ)だが、届きそうで届かない。沿岸警備隊に捕まるなどして3度失敗し、強制収容されたこともあるという。15歳で臨んだ4度目の挑戦で、ついに成功。途中、荒波でボートから海へ振り落とされ、おぼれかけた女性がいた。その姿を見たフェルナンデスが、海に飛び込んで必死の思いで助け上げてみると、なんと女性は自分の母親だったという衝撃のエピソードもある。

 無事亡命に成功し、フロリダ州タンパで通い始めた高校では、もちろん野球に没頭した。高校では必死に英語を勉強する一方で、折り紙付きの実力を武器に、ハイレベルと言われるフロリダ州の高校球界でメキメキと頭角を現した。2011年ドラフトでマーリンズが1位指名。同じく記者会見に出席したヒル強化担当責任者は「高校3年の時、ホゼの家のキッチンでテーブルを囲み、契約に臨んだことが思い出される」と話すと、涙で言葉を詰まらせた。

 キューバからの亡命者やキューバ系アメリカ人の多いマイアミで、フェルナンデスは英雄的存在だった。デビューした2013年に12勝6敗、防御率2.19の好成績で新人王を獲得。90マイル台後半(150キロ台後半)の豪速球で三振の山を築き上げる姿は、母国での生活を捨てて新天地で自由と活躍の場を求めるキューバ系住民、そして広くラテンアメリカ系住人にとって、まさにスーパーヒーローだった。

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