「負けた気がしない」の思い残した聖地へ 恩師、友人が語る岸孝之の素顔

岸孝之が「恩返し」誓う故郷、その思いのルーツを探る

 西武からFA宣言した岸孝之投手が、野球を始めた原点の地である東北、仙台を本拠地にする楽天に移籍した。東北学院大からプロ入りし、10年。岸は11月18日の入団会見で「野球を始めたのが、この仙台。プロに入るまでたくさんの人にお世話になり、支えられてここまでこられた。そういう方たちに成長した姿を見せたい、地元に恩返しをしたいなという強い思いがありました」と語った。通算103勝を誇る右腕として、大きな期待を背負って故郷に戻る岸は、どんなアマチュア時代を過ごしたのだろうか。

 2002年7月16日。名取北高のエースだった岸は仙台二高に敗れ、高校野球を終えた。台風が接近し、試合途中で雨が降り出した。ドロドロになりながら投げ抜いたが、味方のエラーもあり、2-4で敗戦。気づけば雨は上がり、学校に戻ると空には大きな虹がかかっていた。

 仙台市で生まれ育った岸は小学3年から少年野球チームに入った。柳生中から名取北高に進学。「小さくて少年野球のエースみたいでした」と回想するのは、岸の名取北高時代の野球部監督・田野誠さん(現利府高野球部監督)だ。

 岸が高校1年だった2000年夏の宮城大会登録メンバーを見ると、岸は身長170センチ、体重51キロで登録されている。170センチで登録されている同級生の体重は85キロや64キロ。160センチ台の先輩もいるが、体重は50キロ台後半だ。田野さんは170センチの岸が160センチくらいに見えたそうだが、小さく映ったのもうなずける。細身の少年だったが、「フォームはきれいだった」と、その姿が焼き付いている。

 名取北高の同級生でチームメイトだった佐藤克明さんは「フォームは今とほとんど変わっていないと思う」と話し、「全身がバネみたいな選手だった」と振り返る。

「岸くんはプレーの質が感覚的に優れ、冴えている人。スポーツは何をやってもできましたね。サッカーもバスケも上手で運動ができた。体の使い方が違いました」

 そう話す佐藤さんは、岸の野球人生のキーマンでもある。

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY