「神様、仏様、稲尾様」の投球術 「3つの球種はすべて同じ握りだった」

稲尾氏が明かした「コントロールがよくなる秘訣」とは?

 稲尾氏は、リリース直前の打者の体勢を見て、相手の狙い球や心理状態などを予測し、投げるボールを考えていたというのだ。当然、捕手とのサイン交換はなし。そんな驚異の投球術で伝説的な成績を残すことになった。肩の線に特徴が出ない選手は、巨人の長嶋茂雄終身名誉監督だけだったという。

 また、稲尾氏は投球で最も大切なことの1つある「リリースポイント」について「絶対に人間はリリースポイントを一定に保てない。そこをどういう風にして一定に保つかというのがコントロールがよくなる秘訣」と考えていたと、松井氏は明かす。

「例えばリリースが狂う原因に何があるのかとなると、ランナーがいるとか、ピンチだとか、心理状態によって変わってくる。あとは、ブルペンとマウンドでは背景が違う。そういった外的要素もいっぱいある。これをどう克服するかと考えたそうです」

 リリースポイントが狂い、コントロールが乱れたら、自分が立ち返る場所があればいい。稲尾氏は「オレは膝や」と話していたという。「コントロールが狂って、調子が狂った時に、稲尾さんは投球フォームの中で膝の調整が出来た」。これによって、安定感のある投球が続けられた。

「神様、仏様、稲尾様」――。伝説の男は、紛れもなく球史に名を残す大投手だった。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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