“予測できる割合”が格段に増加―DeNA筒香嘉智、知られざる進化の裏側・後編

筒香が重ねる試行錯誤、「『ああ、あかん』って見方を変える感じ」

 では、どうしたら「感じて反応する見方」を身につけられるのだろう。田村氏は「ここで目を『外の目=ハードウェア』と『内の目=ソフトウェア』に分けて考えると分かりやすいんですよ」と話す。

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視覚情報センターの田村知則氏の元には、質の高いパフォーマンスを目指す数多くのアスリートが訪れる【写真:編集部】

「外の目というのは、いわゆる視力。人間は2つの目とその周りの筋肉を使って網膜に画像を映して空間を認知する。その機能を指します。F1レースに例えるなら、エンジンや車体といったハードウェアの部分。ここに問題があれば、それを整える必要があります。

 内の目というのは、見方を決める意識や心のこと。F1で言えば、車を動かすドライバーとそのテクニックです。外の目というハードウェアの動きを決めるのは、意識や心、つまりソフトウェアなんですね。ドライバーの腕が悪ければ、近視になる見方、乱視になる見方、病気になる見方をして、何も問題のなかったハードウェアに問題が生まれる。逆に、ドライバーの腕がよければ、ハードウェアが持つ本来の機能以上のものを引き出すこともできる。

 だから、感じて反応する見方ができるようになるかは、内の目次第なんですね」

 打席に立った時に、この「感じて反応する」見方はどう応用されるのか。向かってくるボール1点を集中して見た場合、2つの目がロックされて視野が狭くなり、身体全体に力が入ってしまう。身体が緊張した状態から目で情報を入力しても、身体は瞬時には動かない。より速く反応して動くためには、身体が緊張していない方がいい。そのためには、2つの目をボール1点にロックせず、広くピッチャーがいる風景として全体を捉える見方をする必要となる。この見方を変えるのは内の目=意識や心となるわけだ。

 筒香も打席に立った時は、ピッチャーを風景の一部として見るように心掛けているという。視野に入るのは投手だけではなく、ボンヤリとだが、広くは右翼手の守備位置まで入ることもあるそうだ。

「最初は田村先生がおっしゃってることが、なかなか実践できなかった。いまだに打席に立った時に力むこともあります。特に『打ちたいな』って思ってる時は、意識を使ってガッと見にいってしまう。そんな自分に気が付いて『ああ、あかん』って見方を変える感じ。こういうことは、まだまだありますね」

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