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ドラフト1時間後に“クビ”宣告 楽天は「命の恩人」、ドラ9左腕が感謝の初登板

「命の恩人」への恩返し「自分くらいのポテンシャルなら命をかけて投げないと」

「85番目の男」は指名後、フォーム固めに腐心した。未完成のサイドスロー。年明けの新人合同自主トレまで必死に「投げるたびに毎日、変わってしまう」というフォームを矯正するため、ネットスローを続けた。スライダーにキレが出て、手応えをつかんだのは、2月の春季キャンプ直前。そこからオープン戦6試合で防御率1.42と結果を残し、あれよあれよと開幕1軍に入った。

 今年開幕1軍入りした新人15選手で、全体85番目の指名は最下位だった。175センチ、81キロ。決して大きな体があるわけでも、特に速い球があるわけでもない。唯一、違うのは左から繰り出す肘の位置が周りよりもずっと、低いことだ。

「自分くらいのポテンシャルならば、1回の登板に命をかけるくらいで投げないと。頭も技術も、自分が持っているものをすべてかけないといけない。でも、不安はなかった。ドラフト9位であっても、まだ出てない結果を怖がることの方がもったいない。結果が出るか、出ないか、可能性を決めるのは、すべて自分でいい」

 早大時代、中村奨吾(現ロッテ)、重信慎之介(現巨人)らとともにリーグ戦に一塁でスタメン出場したこともあるほど、打撃センスは高かった。だから「チーム残留なら野手転向」という方針もあながち、ない話でもなかった。しかし、今は投手、そして、プロという道を与えてくれた楽天に報いることしか頭にない。

「9位という順位でも活躍することを見せて、獲っていただいた恩返しがしたい。まずは勝ちパターンで『コイツでいこう』と思ってもらえるようになること。そして、今まで見てきた世界と全く違うプロという世界で、野球を楽しみ尽くしたい。自分は自分を信じてやっていくだけです」

 アマ野球で投手のクビを宣告されながら、ドラフト9位で拾われたプロのマウンドで躍動する。そんな数奇な野球人生は、そうないだろう。しかし、「命の恩人」となった球団への恩返しを秘め、高梨はスタジアムの中心で腕を振る。マウンドに立てる喜びを、誰よりも感じながら。

【了】

神原英彰●文 text by Hideaki Kanbara

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