ホークス今宮の守備が引き留めた“流れ” 延長12回勝利につなぐ美技併殺

8回に完成させた今宮→本多のビッグプレー

 試合の行方を大きく左右するプレーだった。22日の楽天戦(ヤフオクD)。「結果的にチームが勝ちましたし、打てない時こそしっかり守りで貢献しないと」。ソフトバンク不動の遊撃手、今宮健太がチームを救うビッグプレーを見せた。

 同点で迎えた8回だった。無死一塁。打席には4番・アマダー。1ボールからの2球目だ。森が投じたカットボールを弾き返した打球は二遊間への鋭いゴロ。これを今宮が横っ飛びでキャッチし、体勢を崩しながらも、懸命に二塁へトス。フォースアウトでまず1死。これを受けた本多も難しい体勢で一塁へと転送。見事に併殺を完成させた。

 抜けていれば、無死一、二塁の大ピンチを招いていた場面だったが、このプレーがもたらした意味は、ピンチの拡大を防いだだけに収まらない。

 7回裏へと時間は遡る。6回に同点と追いつき、球場全体が勝ち越しに向けた雰囲気を作ったソフトバンクの攻撃。先頭の福田が四球で出塁、高谷が犠打を成功させて1死二塁の勝ち越しのチャンスを作った。だが、本多の打席で、二塁走者の福田が三盗を狙って飛び出してしまう手痛いミス。一気に2死走者なしとなり、本多は一ゴロ。球場全体の盛り上がりは一気にしぼんだ。

 そして8回。楽天先頭のウィーラーの打球を、三塁の松田が悪送球。出塁を許してしまう。

 野球の世界には“流れ”があると言われる。ボーンヘッドでチャンスを潰し、その直後に失策。6回に同点に追いつき、ソフトバンク側へ向いていた、その“流れ”というものが、にわかに楽天へと傾き始めていた。

 そこで出た今宮のファインプレーである。抜けていれば、勝ち越し点を奪われた可能性は高まっていたはず。傾きかけた“流れ”を止め、留めた。もちろん、難しい体勢から一塁にきっちりと送球した本多も称賛されていい。この2人による一連のプレーが、延長12回サヨナラ勝ちを導いたと言っても過言ではないだろう。

 打力向上を目指している今季の今宮の打率は、ここまで.257と高いとはいえない。それでも、背番号2には打力を補って余りあるだけの、チームを救える類い稀な守備力がある。1点を生む力はもちろん、1点を防ぐ力だってチームにとっては同じくらい重要だ。この日のプレーは、まさにその最たる証。だからこそ今宮は、ソフトバンクにとって欠くことの出来ない存在になっているのである。

【了】

福谷佑介●文 text by Yusuke Fukutani

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