今季連覇狙う広島が導入した“切り札” 緒方監督が語るその活用法とは

今季連覇狙う広島が導入した「コアトレチェア」

 開幕から1か月を迎えようとしているプロ野球は連日連夜、手に汗を握る熱戦が続いている。そんな中、セ・リーグで快調な滑り出しを見せているのは昨シーズン25年ぶりにリーグ優勝を達成した広島東洋カープだ。

 昨シーズンは89勝52敗2分けで、2位・巨人に17.5ゲーム差をつける圧倒的な強さを披露。今季もここまで首位だ。(4月30日現在)

 チームの大黒柱の黒田博樹投手が昨季限りで現役引退となったが、大型補強に頼らず、2年目の岡田明丈投手やドラフト1位の加藤拓也投手らが好投。ここまでは黒田引退の影響を感じさせない戦いぶりを見せている。

 今季はリーグ連覇に向け、新たな施策にも取り組んでいる。腹筋や背筋などの胴体や骨盤など「体幹」と呼ばれる部分やインナーマッスルを強化するため、最新のトレーニング家電を導入した。

「キャンプの時に初めて使ってみましたね。トレーナー室に置いてあったので『何かな?』と思いながら興味本位で座らせてもらった。興味があってトレーナーにも聞きました。もともと、現役時代から腰が悪くて手術やケガもあり、バランスボールに乗ったり、体幹トレーニングをしていた経緯もありました。『コアトレチェア』でトレーニングをしてみたら、非常に体幹に刺激が入った。今も腰痛予防になると感じています」

 そう話すのは、広島を率いる緒方孝市監督だ。昨季は指揮官として自身初のリーグ制覇を果たし、最優秀監督賞を受賞。自身が鈴木誠也外野手の大活躍を表現した「神ってる」というワードは、2016年新語・流行語大賞の年間大賞にも選出されるなど大きな話題を呼んだ。2016年は、冴え渡った采配とともに、まさに名将として一気にその名を広く知らしめた年となった。

 その指揮官が選手とともに今春の日南キャンプから取り組んでいるのが「コアトレチェア」を活用したトレーニングだ。

 同製品はパナソニック社が開発し、今年の2月25日に発売されたトレーニング家電で、広島は今シーズンからキャンプ地のみならず、本拠地マツダスタジアムでも導入している。現役時代、3度の盗塁王と5度のゴールデングラブ賞を受賞する一方、腰痛に苦しんできた指揮官はこの「コアトレチェア」の効果の兆しを感じ取っているという。

「このチェアに近い動き、エクササイズを、現役時代にいろんなトレーニングでしていたな、と思い出しました。割と近い感覚があるという印象を受けました。監督になってからの2年間というのは、全然トレーニングする時間がなく、古傷や持病で辛いときもある。トレーニングだけじゃなく、ゆったりリラックスできるマシンにならないかというのもあって、ちょっと使ってみたいなというのが最初の感想でした。効果に関して? これからますます感じるんじゃないかと思います」

緒方監督が語るプロ選手の“長寿”の秘訣とは…

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 緒方監督は選手に対しても、このトレーニング家電を最大限に活用してもらいたいという気持ちがあるようだ。

「現役の時から思っていたのは、グラウンドの中だけがトレーニングじゃない、ということです。いかにグラウンドを離れたところで体のケアとか練習のための準備をし、コンディションを整えられるか。(コアトレチェアは)自分の時間、グラウンドを離れてユニフォームを脱いだ時間に、気軽にできる。使えるんじゃないかと思いますね。

 人間、家に帰れば椅子に座る時間は結構長い。そういったちょっとの時間でいいと思うんですよ。ただトレーニングでもそうなんですけど、継続して毎日どうやって続けていくか。そういった意識を持って過ごしていくことが大事。これに1〜3時間乗り続けるのではなく、1日のわずかなリラックスした時間で使って意識を高めることで効果が高まるんじゃないかと思います」

 グラウンドの外で過ごす時間を、いかに野球のパフォーマンスアップにつなげるか——。緒方監督は現役時代から、この哲学とともに野球人生を歩んできた。1986年にドラフト3位で指名され、2009年に現役引退するまで、23年間もの間、広島一筋でプレー。そんな指揮官は、自分に何が必要なのか、それに気付くことこそが、息の長い現役生活を過ごすための秘訣だと語る。

「プロ選手だったら、そういうところに気付かないと。選手のパフォーマンスが出せないし、そうやって考えることが、ユニフォームを着続けることにつながっていくんじゃないかな。長く現役生活ができることにつながると思っています」

 そしてこのコアトレチェアにも、そのヒントが詰まっていると見ているようだ。

「昔と違って、トレーニングや体の理論はかなり進んでいる。たくさんの情報の中から、自分に合うベストのものを選ぶのはなかなか難しいこと。僕は(現役時代に情報やトレーニング理論が)ないならないなりに工夫してやっていた。もし、(コアトレチェアが)あったら使っていたと思いますね」

 コアトレチェアに関しては、侍ジャパンとしてWBCに参戦していた鈴木もキャンプから活用し始めたと語っていた。「神ってる」若きスターのプロ意識の高さに緒方監督も目を細める。

「若いんでね。年々プロでの課題をクリアしている。昨年からまた今年にかけていいトレーニングをしています。体も大きくしている。ただ、じゃあ体を大きくしたから、それがすべて成績につながるかというと、そういう世界じゃない。大きく筋肉を鍛えた中で、いかにバランスを取る感覚を掴み、ケガをしないための繊細な感覚をこういうトレーニングから学んでいくか。それが成績につながると思っている。彼もそういった感性は、かなり高いと思う。ああ見えて繊細なところもあるんでね。今年いい成績を収めるという自信を持ってやってもらいたいですね」

 緒方監督はそう話し、走攻守でトップを目指す鈴木のさらなる飛躍に期待を寄せた。また、指揮官自身、現役時代からパフォーマンス向上のためにアンテナを張り巡らせていた経験から、このコアトレチェアは、特に長期的な視点から守備や打撃向上に好影響をもたらすと考えている。

コーチングスタッフも活用、健康促進の効果も実証されている「コアトレチェア」

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「これもウェイトトレーニングなどと一緒で、すぐ効果がどうのこうのというわけではないと思います。こういうマシンを使いながら、いかにパフォーマンスにつなげていくかを考えることが一番、大事なこと。それが第一歩であって、じゃあこれに乗ったからすぐに打てるというわけじゃない。これに乗って体幹を意識できる、鍛えられる、そういう以前と違う感覚を感じ取れれば、それが次につながっていく。バッティングにしろ、守備にしろ、走ることにしろ、そうなんです。先につながっていく。すぐ結果に求めるんじゃなくて、まずその第一歩ができるかということでしょう」

 この“切り札”についてはコーチングスタッフも活用しているそうで、「選手と違ってコーチは、トレーナーがマッサージして痛みを取ってくれるわけではない。コーチになったら自分でお金を払って健康管理や、工夫してトレーニングすることになる。逆にコーチになってからの方が、体により敏感かもしれませんね」と緒方監督。また、「一般の方にとってもいいマシンだと思います。その良さに気付くには、いかに長く続けられるか。それが、この商品のホントの良さが分かる、自分で体感できるポイントだと思います」と話す。

 緒方監督が重視する「継続性」については、コアトレチェアが「座ってできる体幹トレーニング」をテーマとしているため、そう難しくないかもしれない。また、適切に鍛えることが難しいとされるインナーマッスルについても、正しくトレーニングを行うことが可能だ。これまでにない大きなメリットを秘める新発想のマシンと言える。

 コアトレチェアで鍛えることができる部位は胸、背中、腰、もも、お尻などのアウターマッスル(表層筋)と、インナーマッスル。インナーマッスルの衰えは肥満や姿勢の悪化、腰痛や肩こりなど様々な症状を生む要因の1つになる。コアトレチェアを活用したトレーニングメニューは、トップアスリートと専属契約を結ぶプロトレーナーの木場克己氏が監修。さらにトレーニングは音声ガイダンスに従って行うことができ、パナソニックが独自開発したV字運動で身体を揺らして筋肉に負荷をかけたり、シートの自動変形により座り方を変化させることで、鍛える筋肉を調整することも可能だ。

 トレーニングの自動コースは6種類。美しい姿勢を取り戻す全身コアトレ、下腹部のたるみを引き締め、くびれを作るお腹・ウエストコース、骨盤周りを鍛える下腹・骨盤底筋コースがそれぞれ「強」「弱」に設定可能だ。加えて、トレーニングで体幹を鍛えた後には、疲労回復効果の高いストレッチコースで怪我の予防に努めることもできる。

 健康促進の効果も実証されている。40歳から50歳の男女7人がコアトレチェアによるトレーニングを1日ごとに15分を2回、3週間モニタリングを行った結果、最高でウエストがマイナス11.4センチ、下腹部がマイナス9.1センチ、ヒップがマイナス5.3センチ、体重がマイナス3.1キロと、様々な引き締め効果が確認されている(注・パナソニック社調べ。効果には個人差あり)。

 広島の選手やコーチングスタッフらプロスポーツ界だけでなく、一般の人たちの健康促進にも効果が期待できるトレーニング家電「コアトレチェア」。今後、多くのシーンで活躍しそうだ。

【了】

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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