窮地に陥った田中将大に何が起きているのか…データから探る不調の原因とは?

MLB移籍当初から変化した投手としてのスタイル

 田中将大が窮地に陥っている。先発したここ2試合は、1回2/3を投げて自責点8、3回0/3を投げて自責点6と先発の役割を果たせていない。今季は開幕でつまづいたが持ち直し、4月30日時点で防御率は4.20まで回復していたが、現在は再び6.56まで下落した。これがデビュー間もない若手なら、先発ローテを外されても仕方ない成績だろう。

 なぜ、田中将大はここへきて失速したのか。MLBの記録専門サイト「Baseball Reference」のスタッツを基に考えてみたい。

 2014年、MLBに移籍した頃の田中将大は、三振を奪って打者をねじ伏せるパワーピッチャーに属する投手だった。9イニングあたりの奪三振数を示すK9は、MLB1年目の2014年は9.31とイニング数を上回る奪三振数だった。ここぞという時には、NPB時代から言われた「ギアチェンジ」で速球をズバッと投げ込む姿が良く見られた。しかし、この年の7月に右ひじ靭帯を部分断裂。トミー・ジョン手術を回避してPRP療法で治療をした後は、肘に負担がかからない技巧派へと転身を図っていた。

 K9の推移から、スタイルチェンジが読み取れる。2015年は8.12、2016年は7.44。三振を奪うのではなく、打たせて取るタイプへと変化していったのだ。2016年9月15日には、7回を投げて自責点1ながら奪三振は「0」という試合もあった。

 最近の田中の投球スタイルは、チームの先輩だった黒田博樹に似ていると言えそうだ。小さく動いて落ちる2シーム(シンカー)でカウントを整え、スライダーとスプリッターでゴロを打たせる。ゴロアウトとエアアウト(フライ、ライナー)の比率であるGO/AOは1.2前後。ゴロアウトがフライアウトよりも多いのが基本だった。

 しかし、大炎上した5月14日、20日の試合では、ゴロは合わせて6個、フライは17個。ゴロを打たせることができなくなっていた。ゴロを打たせるための武器であるスプリッターが制御できていなかったのだ。本人もそれを意識していたのだろうか。別のMLBのデータ専門サイト「ファングラフス」によると、田中のスプリッターの比率は全投球の25%前後だが、5月14日は61球中11球(18%)、20日は76球中9球(11.8%)しかスプリッターを投げていない。最近の田中は、最大の決め球=マネーピッチであるスプリッターに頼れない状態でマウンドに上がっていた可能性が高そうだ。

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