西武・秋山の本塁打量産は「突然変異」か「長打力定着の兆候」か

秋山の長打力増加が“歴史的”

 こうした点を鑑みても、ISOが打者のパワーを測る物差しとしてバランスの取れた指標であることが分かる。ちなみに対象全1014打者の平均は.157で、同じ数値をマークしたのは2010年の小久保氏(福岡ソフトバンク)だった(二塁打22本、三塁打0本、本塁打15本)。

 注意しなければならないのは、ISOはあくまで打者の特性を図る指標であって、その優劣を測るものではないということだ。例えば、2000年以降の下位20人には赤星憲広氏(阪神)が3度登場しているが、そのうち2度は打率3割をクリアしている。この17年間で、2015年の中島卓(北海道日本ハム)が記録したISO.023は最も低い数値だったが、66四球を選び、出塁率.350はリーグ平均を上回っていた。

 チームの得点力における長打の影響は多大なものだが、もちろん野球はそれだけではない。ISOの低い打者は盗塁や犠打の多い選手が多く、走塁や守備も含めて磨き上げた技術で勝負した職人が多数見られるのも特徴だ。

 ISOの性質を説明したところで検証したいのが、今季の秋山の長打力増加だ。ISOは昨季が.126で今季は.234と、その差は.108で文字通り大幅なパワーアップを遂げている。前年比でこれ以上の上昇を果たした打者がどれだけいたのか抽出したい。ただし、テーマは「中距離打者のパワー開眼」なので、今年の秋山のように「前年まで15本塁打未到達の打者」を対象とした。

【ISO前年差上位10人】
1位 高橋慶彦(1983年・広島) .130
2位 真弓明信(1980年・阪神) .124
3位 中西太(1953年・西鉄) .122
4位 鈴木健(1996年・西武) .121
5位 武上四郎(1969年・アトムズ) .110
6位 浅村(2013年・埼玉西武) .106
7位 田宮謙次郎(1956年・阪神) .102
8位 王貞治(1962年・巨人) .1015
9位 メイ(1979年・南海) .101
9位 今岡誠(2002年・阪神) .101

 このように、今季の秋山の長打力増加は歴史的と言える。残りの試合でどれだけの本塁打を上積みするかはもちろん、ISOの伸びが最終的にどれほどになるのかも注目すべきポイントだ。そして、そのパワー開眼が「突然変異型」なのか「定着型」であるのか。答えは数年先を待たなければならないが、どちらにしても秋山選手のバットが、強打を誇る埼玉西武打線をリードしていくことに変わりはないだろう。

【動画あり】西武強力打線を牽引…6月24日試合終了時点でシーズン自己最多本塁打タイとなる14号を放った秋山

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