「最後が和田でよかった」「嬉しかった」…井口と和田を繋いだ不思議な力

「本当に最後の最後に和田と勝負できたので良かったです」

 試合終了後、井口は左翼スタンドに詰めかけて熱い声援を送った多くのロッテファンに挨拶に向かい、頭を下げた。さらに右翼席の、かつて自分を応援してくれていたホークスファン、内野席の全てのファンに向かって丁寧に頭を下げて回った。一塁側ベンチ前では、1995年からの5年間チームメートだった工藤公康監督、そしてこの日のラストゲームを彩った和田から花束を贈られた。球場全体から送られる惜しみない拍手の中で、井口の福岡での最終戦が終わりを告げた。
 
井口「最後は本当に嬉しかったです。工藤さんも迎えてくれて良かったです。ヒットというヒットじゃないですけど、3打席、最後にここで立てたというのが良かったですね。本当に最後の最後に和田と勝負できたので良かったです」

和田「いいピッチングを井口さんに見せたいという気持ちがすごくあった。思い切って、持っている球を全部見てもらおうと思って、井口さんには全球種を使いました。自分の成長した姿を少しでも見てもらえたかなと思います」

 井口は青山学院大から1997年にドラフト1位でホークスに入団。和田は自由獲得枠で2003年に井口のいるホークスの一員となった。チームメートとしてプレーしたのは2年間。和田の加入から2年後の2005年に井口はメジャーに挑戦。2009年の井口のロッテ移籍から3年後の2012年に、和田もメジャーに挑戦した。大卒でダイエーに入り、メジャー挑戦も経験するなど2人には共通項もある。

「井口さんは背中で語る方だったので、全ての面において、振る舞いだったり、プロはこういう風にするんだというのを、真似じゃないですけど、勉強しました。大卒というのもありますし、色々話すようになって、よくしていただきました。食事にいったことも何回もありますし、公私ともに可愛がってもらいました」と和田は、井口への思いを語った。

 井口が福岡で、そして敵地で戦う最後のゲームで放った最後のヒットが和田から。福岡で、敵地で喫した最後の三振は、和田が奪った1500個目という節目の奪三振。これほどまでに記録にも、記憶にも残る展開を、誰が予想しただろう。2人が描いたストーリーは、試合の勝敗以上に人の心を熱く惹きつける筋書きだった。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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