「何してんだろ、俺って」―ソフトB上林、歓喜の中で流した悔し涙の意味

ソフトバンク・上林誠知【写真:福谷佑介】
ソフトバンク・上林誠知【写真:福谷佑介】

日本S進出を決めた直後の涙と「自分への苛立ち」

 ヤフオクドームは歓喜に沸いていた。延長11回のサヨナラ劇で2年ぶり8度目の日本一を決めたソフトバンク。喜びを爆発させ、笑顔で溢れるチームメートを横目に、どこか喜びきれていない自分がいた。「悔しいというより、自分が情けなかった」。1年の長い戦いは最高の形で幕を閉じた。ただ、そのお祭りムードの中で上林誠知の表情は浮かなかった。

 日本一が決まった11月4日から遡ること13日。上林は泣いていた。楽天とのクライマックスシリーズ第5戦を制して3勝2敗とし、チームは日本シリーズ進出を決めた。試合後。お立ち台で工藤公康監督がインタビューを受けていた。その傍ら、ベンチ前に腰を下ろしていた背番号51の頬を涙が伝った。その様子はカメラに抜かれ、テレビ画面に映し出されていた。

「自分、人前では泣かないですし、ましてやテレビの前でなんて絶対に泣かないんですけど…。ああいう風になってしまったということは、相当自分の中でくるものがあったんでしょうね。自分への苛立ちですよね…」

 悔しかった。自分が腹立たしかった。クライマックスを突破した喜びなど、感じられなかった。悔し涙だった。

 今季は右翼の定位置を掴んで一気にブレイクを果たした。交流戦終了まで打率3割を越えて8本塁打を放ち、脚光を浴びた。だが、中盤以降は状態を落として成績が下降。最終的には打率.260、13本塁打、51打点という数字に終わった。

 クライマックスシリーズ・ファイナルステージで第1戦、第2戦に先発したが、計5打数ノーヒットに終わり、第5戦では、電撃復帰を果たした柳田悠岐に代わって出場選手登録を抹消された。

 今季開幕スタメンを勝ち取り、94勝を挙げて独走優勝を果たしたチームに貢献した。1年間、1軍の出場選手登録を外れることはなかった。それが、日本シリーズまであと1勝と迫ったところ、最後の最後で登録を抹消され、胸の中には「何してんだろ、俺って」との思いが広がった。

1年間フルに戦った実感した「継続することの難しさ」

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