アメリカでも常識を覆すか…エンゼルス大谷翔平が踏み出す新たな伝説
野球界最高峰のメジャーでも「二刀流」で成功できるか…
プロ野球史上初の「1番・投手」による先頭打者本塁打。高卒2年目から3年連続2桁勝利。投げては日本球界最速の165キロを叩き出し、打っては22本の美しいアーチを描く。パ・リーグを制したその日も最後までマウンドを守り、日本シリーズでは芸術的なまでの悪球打ちを披露し、最終的に指名打者・投手部門でともにベストナイン、リーグMVPに輝いた。
「二刀流」の実現を疑問視する声、投手としての欠点を指摘する声、打者としての才能こそを評価し、「一刀」を極めることを勧める声。大谷選手はこの激動の5年間で、その全てを自身が秘める可能性への称賛に変えてみせた。野球の歴史は長いが、大谷翔平という稀有な選手の存在により、我々は何度歴史的瞬間を目撃したのか。もはや枚挙に暇がないほどだろう。
11月の会見では、「ファイターズに入ってよかった。それは一生思う」と語った大谷選手。その気持ちは、「4番・投手」として出場した今季最終戦において、完封勝利という最高の形でも示した。言葉だけではなく、結果を伴わせた形で記念すべきマウンドを締めたのも、大谷選手らしいと言えるのではないだろうか。
12月9日(日本時間10日)にエンゼル・スタジアムで行った入団会見でも、大谷選手は移籍に際して奔走した代理人、自身の獲得に動いた他の球団に対する感謝を伝えるために言葉を尽くした。その謙虚な姿勢、聡明な好青年としての姿は、野球ファンなら幾度となく目にしてきたものではあるだろう。
一方で「野球をやっている以上は、一番の選手になりたいと思うのが普通。いろんな方に『彼が一番だ』って言ってもらえることが幸せ。そういう選手を目指していきたい」と話す姿は、「謙虚」「好青年」といった形容に似つかわしくない苛烈さを秘める。「世界で一番になる」ということは、自身の上には誰も立たせないということだ。これから待ち受ける多くの競争に、全て打ち勝っていくということだ。それはきっと、何があっても過酷な道を突き進む覚悟と、計り知れないほど強靭な意志がなければ成し得ないことだろう。
エンゼルスの一員として、大谷選手がメジャーリーグの舞台で「二刀流」として成功するかどうかはまだ分からない。ただ、この若者に何度も想像を超えられてきた我々は、何も始まっていない段階から、彼の可能性の何一つとして否定するべきではないだろう。しかし、周囲から「そんなことはできない」と侮られると、余計に燃え上がる選手なのだ。次は海の向こう、うんと目の肥えた人々の常識を変えてくれることを期待しながら、今はただ、ついに夢への一歩を踏み出したその背中にエールを送りたい。