西武にとって34歳ベテランの存在とは 2008年V戦士・栗山が見せる貢献度

10年ぶり規定打席到達逃すも放った存在感、“サヨナラ男”の風格も

 だが、栗山が真価を発揮したのはここからだ。5月21日の福岡ソフトバンク戦では、同点で迎えた9回に打席が回ってくると、ここまで18試合連続無失点を記録していた岩嵜翔投手の甘く入った直球を見逃さなかった。捉えた打球はバックスクリーン右に飛び込み、プロ16年目にして自身初のサヨナラ弾となる。

 さらに、多くの埼玉西武ファンが今季のベストゲームに挙げるだろう8月17日の楽天戦。圧倒的な強さを見せた「炎獅子」ユニホーム着用試合の最終戦。エース・菊池雄星投手と、相手先発・安樂智大投手が息詰まる投手戦を繰り広げ、両チーム無得点のまま試合は最終回へ。そして9回裏2死一、二塁、真っ赤に染まったメットライフドームに「代打・栗山巧」のコールが響く。

 大歓声の中、栗山はカウント0-0から、ハーマン投手の152キロの直球を迷わず振り抜いた。「とにかく外野の頭を越えてくれ」と願った打球は、ファンの声援の後押しを受け、その向こうの左翼席へ。頼もしい若獅子の台頭が多分に影響していたに違いない「炎獅子」の快進撃。それが、出場機会が減る中でも準備を怠らないベテランの一発によって、ひと時の勢いにとどまらない「伝説」となった瞬間だった。

 サヨナラ男としての風格が身に付いたのか、9月17日の福岡ソフトバンク戦では押し出し四球で今季3度目のサヨナラ。ただ、終わってみれば116試合84安打9本塁打46打点、打率.252という成績で、10年ぶりに規定打席に到達できなかった。それでもその勝負強さと雄弁な背中は、チームの4年ぶりのAクラス入りに確かな貢献を果たしただろう。

 2018年、埼玉西武は球団創設40周年を迎え、4年ぶりに「ライオンズ・クラッシック」が開催される。そこでは2008年の栄光のユニホームも復活するという。栗山は、その年のリーグ優勝・日本一を知る数少ないベテランの1人だ。あれから、10年もの月日が経過しようとしている。

 当時の若手はベテランに成長し、そして多くのV戦士が、志を次世代に託してユニホームを脱いだ。あの歓喜を知るベテランと、まだその味を知らない若獅子と。双方の力をかみ合わせて、もう一度頂点に上り詰めるという悲願。それがついに叶った時、その輪の中心には、埼玉西武が誇る「背番号1」がいなければならない。

【動画】西武の頼れる男! 栗山巧の魅力を特集

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY