名人芸で歴代10位のセーブ数 “小さな守護神”が見せた投球術

打者翻弄、「どこからボールが出てくるかわからない」

 170センチの短躯、ボールを持つと手首を曲げて、体の影に隠し、ぎりぎりまでボールの出所を見せない独特のフォームを編み出した。打者からは「どこからボールが出てくるかわからない」と言われた。

 速球は140キロ台。タイミングを外すスライダー、カーブ、シュート、フォークなど多彩な球種を織り交ぜて、打者を料理した。体をぐっと沈め、同じフォームから違う球種を投げ分けた。

 塁上の走者が出ると、微妙にタイミングを外すなど、1球1球に工夫を凝らした。強打者の内角に思い切って投げる度胸もあった。体に恵まれないハンデを、頭脳的な投球でカバーした。代表的な技巧派投手と言えるだろう。

 2006年から8年連続で40試合以上に登板。酷使に耐え、日本ハムの救援陣を支えてきたが、2014年に成績不振に陥る。2015年には両ひざを痛め、治療のために全休。2016年に1軍に復帰するも、以後は本来の投球ができず、2017年オフに退団が決まった。39歳だった。通算167セーブは歴代10位。日本ハムでは1位だ。

 退団後は、古巣の日本通運にコーチ兼任投手で復帰することが決まった。プロ野球時代に培った名人芸ともいえる投球術、そして野球選手として長く活躍するための生活習慣が際立った。その心得は、日本通運の後輩たちにも伝授されることだろう。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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