メジャーは「夢」から「選択肢の1つ」に “田澤ルール”は見直しを検討すべきか

海外野球経験者が日本球界にもたらす貢献とは

 日本球界に優秀な人材を引き止めるための対策として設けられたルールのようだ。だが、世間一般がグローバル化の一途をたどり、侍ジャパンが世界の野球に対抗しながら頂点を目指す中で、海外でプロとしての1歩を踏み出し、日本とは違った角度から野球を見て、考えて、実践した選手の視点や経験を、すぐに日本球界に還元しないことは、宝の持ち腐れになりかねない。

 今季のプロ野球界で言えば、ロッテの井口資仁監督、西武の松井稼頭央、巨人の上原浩治、阪神の福留孝介、藤川球児、ヤクルトの青木宣親に代表される海外経験者が還元する経験は、一緒にプレーする選手、所属チームの枠を越え、広く日本球界の成長につながるものだろう。ビジネスという観点を度外視した話だが、海外に活躍の場を求める選手を快く送り出し、日本でプレーしたい選手を快く受け入れる懐の深さが、長い目で見た時、日本の野球をより魅力的なものにするのではないか。

 2009年、田澤は強い意志を持って渡米した。“田澤ルール”に関しても「決まりなので従うだけ」と話す姿勢は一貫している。同時に、自分がどんな制限を受けても構わないが、図らずも“田澤ルール”が生まれたことで後に続く選手の可能性を狭めたかもしれない、と責任を感じ続けている。

 先日、DeNAはダイヤモンドバックス傘下マイナーを自由契約になった中後悠平と契約した。記者会見で、高田繁GMは2年半のマイナー生活を通じて中後が得た経験に期待し、中後は好きな野球を続けるチャンスを与えてくれたDeNAに感謝し、貢献を誓った。

 中後がダイヤモンドバックス傘下2Aと契約解除になった後、田澤は左腕の行く末を気に掛けていた。挨拶をする程度で親交はないが、環境の厳しいマイナーから積み上げた経験を持つ1人として、挑戦し続ける中後の姿に感じるものがあったようだ。「誰が何と言おうと、彼は人とは違う経験をしていますからね」。もちろん、中後には1軍マウンドで結果を残すことが求められるが、自身の経験を伝えることもまた、大きな貢献となるだろう。

 十年一昔どころか、五年一昔、三年一昔くらいのスピードで、物事が目まぐるしいスピードで移り変わる今。時代の流れに遅れないことはもちろんだが、半歩先、一歩先を見据えながら、少しずつ恐れず変化することは大切なのかもしれない。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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