【パ・リーグお仕事名鑑】ロッテの名物ウグイス嬢が明かす思いと裏側 やり残しは「優勝でございます!」

心根にある『好き』が技術をつくる

 谷保さんが当時のロッテ・オリオンズに入社した1990年頃、野球界はまさに男社会の時代。女性スタッフは少なく、その業務もリリーフカーの運転手や券売所の販売員などに限られていた。しかも、夜10時を過ぎると女性スタッフはみんな帰宅を命じられたという。

「でも、今はプロ野球全体として、女性の活躍がいろんな分野で目立っていますよね。球団職員にも女性が増えたし、記者さんも昔に比べると女性がたくさんいます。業務も広がっていて、ビジネスの中核で活躍している女性も決して少なくない。弊社も産休がとれるようになったので、産後に職場復帰する文化も定着しつつありますよ。長く勤めることも可能な環境に変化していると感じます」

 5年前から始まったレディースデーの企画では、様々な部署から女性スタッフが集まって運営を行っており、女性ファンが喜ぶきめ細やかなサービスの提供にも結びついている。そして、どの球団スタッフにも共通しているのが、「ファンの笑顔が見たい」という思いだ。

「私たち球団スタッフもアルバイトさんも、やっぱりチームが勝ってお客さんが喜ぶ顔を見た時に、職種問わずみんなやりがいを感じていると思います。あと、みんな『好き』という気持ちを根底に強く持っている。私の球場アナウンスに関してもそうです。技術も当然大事だけれど、上手にやろうとするよりは、まず野球が好きで、愛情を持ってやること。そうすれば、その気持ちが自然と声に乗っていきますからね」

 好きなことを仕事にすることには、メリットだけがあるわけではない。谷保さんも過去にジレンマを抱えたり、行き詰まってしまったりしたことが何度かあったそうだ。

「でも、なぜ私がここにいるのかを思い返せば、辞めるまでには至らない。野球から離れている自分なんて、もはや想像すらできません(笑)。だから、困難に直面したら、自分が変わっていこう、違う考えを持ってみようと思うようにしています。それを乗り越えられるのも、やっぱり『好き』だからなんでしょうね」

 学生時代に初めて味わったグラウンドの臨場感と、試合を進行しているという責任感。そして、打席に向かう選手にベストな環境を提供する緊張感。まさにそれらが、今感じる仕事の醍醐味そのものだと谷保さんは言う。唯一やり残しているのは、「優勝でございます!」のアナウンスだ。

「マリンスタジアムでロッテの優勝が見たい。胴上げが見たいんです。これまでの2回(05年、10年)はビジターでしたから。それと、もう一つ。嬉しいことに女性がどんどん活躍してきているので、さらに女性が輝ける職場環境を作ること。私が退職するまでには、女性が長く活躍していける会社にしていけるように頑張らなくてはと思っています」

(「パ・リーグ インサイト」岡田真理)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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