元阪神・藪氏が甲子園解説! 星稜150キロ2年生右腕に「これは将来が楽しみ」
28年ぶり2度目出場の藤蔭は「奇襲を意識しすぎたのかも」
第100回全国高校野球選手権記念大会が5日、ついに開幕した。21日の決勝まで16日間に及ぶ熱戦が繰り広げられる。記念大会の開幕カードとなったのは、藤蔭(大分)対星稜(石川)の一戦。大先輩の松井秀喜氏(元巨人・ヤンキースなど)が始球式を務める偶然に重なった星稜が9-4と快勝し、2回戦に駒を進めた。
誇る強打で初戦白星を飾った星稜と、終盤に粘り強さを披露した藤蔭の戦いを、元阪神でメジャーでもプレーした右腕・藪恵壹氏は、どう見たのか。「甲子園の開幕戦で緊張もしたでしょうが、より普段の自分たちに近い野球ができたのが星稜でしたね」と見る。
藤蔭は大分大会の全5試合で先発マウンドに上がっていた市川晃大に代わり、吉村紘輝を先発に起用。藤蔭の原秀登監督は試合後、市川のデータは研究されていると思ったので甲子園出場が決まった直後に吉村に先発を伝えていたという話をしていたが、藪氏は「そこから藤蔭は、奇襲を意識しすぎて、普段通りの戦い方が出せなかったのでは」と話す。
「監督の戦術があるでしょうが、市川君を先発させて、試合の中で研究されていると感じたら、吉村君を早めに投入する形でもよかったのかなと思います。始まる前から、少し意識しすぎてしまったのかもしれません。後半に打線が巻き返したことを考えると、もったいなかったように思いますね」
藪氏がこの試合で注目していたのは、石川大会決勝で4本塁打を放った主将・竹谷理央外野手と3本塁打の南保良太郎内野手。1年生の内山壮真内野手と合わせ、「このクリーンナップは強力ですね」と一目置く。
「石川大会も映像で見ましたが、何よりスイングがいい。竹谷君はヒットが出たけど、南保君は無安打。2人とも、初戦の緊張感からか少し堅くなっているように見えました。注目の開幕戦で一発…という気持ちもあったのかもしれないですね。打てる球を我慢して待てるか。今日は少し気持ちが逸ってしまった部分もあるかもしれません。
こういう試合で大事になるのは、心のコントロール。360度グルリと大観衆に囲まれてプレーすることなんて、滅多にないでしょう。『甲子園には魔物が棲む』と言われますが、甲子園という場所を意味するだけではなく、その独特の雰囲気が大きい。高校生同士、地方大会を勝ち抜いてきた同士ですから、正直、実力差はそこまでない。あとは気持ちで負けずに、いつも通りの自分たちの野球ができたか。そういった意味では、両チームともに失敗しても、積極的に盗塁を仕掛けてきたのは良かったですね。見応えがありました」
元投手という立場から「これは将来が楽しみ」というのは、星稜の2年生エース・奥川恭伸だ。180センチを超える長身で、この日は2回に1点を許したものの3回以降は4イニング連続無失点。7回に2点、8回に1点を失ったが、8回を8安打1四球8奪三振で4失点とし、自己最速の150キロもマークした。
「力強いいいピッチングをしていましたね。最後は少し力んで投げたのかな。勝ったとはいえ、最後の失点はもったいなかったですね。それを差し引いても、体も大きいし、いいフォームもしているし、この先が楽しみですね」
28年ぶり2度目の出場だった藤蔭に対し、今春の選抜ではベスト8入りした星稜。舞台慣れした星稜がより自分たちらしさを出せた結果が勝敗に結びついたのかもしれない。
(佐藤直子 / Naoko Sato)