育成のプロが評価する創志学園・西の「素材」 金足農・吉田を上回る長所も

「ここから1年の成長過程を見ていきたい。そんな気にさせる投手」

「例えば、ピッチャーは『気持ちが乗っている』などとよく言います。ただ、機械が同じ運動をしたら、同じところにボールが行きます。いくら緊張していても、精神的に乱れていても、いい投球フォームで投げれば、いいボールが行く。そこがピッチャーの目指すところです。精神的に乱れるに決まっている。普通の精神状態で投げられるピッチャーなど誰もいません。そこが出発点で、そういう中でどのようにして自分の投球フォームで投げるか。それがピッチャーが一番やることです。ただ、その精神状態とフォームの関係が常に1球1球、動いてるのがピッチャーの難しいところです。

 そして、感覚というのはどんどん変わってきます。西君はここまで結果を残しましたが、今日は思ったようにいかなかった。藤原君が一生懸命リードする中で、西君はどう崩れているかを理解できていなかったように見えました。そして、9回は立ち上がりと同じ感覚で投げていた。ここから体が大きくなれば、全体的なバランスが崩れてきます。そこで大事なことは、いい形のフォームでずっと投げられるか。例えばこの試合では、同じ感覚で投げても『ボールがいかない』『コントロールが乱れた』『なんとか同じにしたい』という繰り返しだったと思います。ここから感覚はどんどん変わっていく。過渡期というのはそういうところです。この先、西君がそこに自分で気がついて、来年もう1段階ランクアップできるか。非常に興味があります。ここから1年の成長過程を見ていきたい。そんな気にさせる投手ですね」

 2年生ながら、その能力の高さは甲子園で存分に見せつけた。来年は間違いなくドラフト候補としてプロから熱視線を浴びる存在。松井氏は「将来が楽しみな素材であることは間違いありません」と断言する。

「西君のいいところは、直球、スライダー、カーブの腕の振りが一緒であるところです。直球と変化球の腕の振りが一緒というのは、バッターとしてはすごく打ちづらい。これが一番の長所。金足農の吉田君は、同じ腕の振りで真っ直ぐの球速差を出せる投手です。ただ、変化球で少し振りの弱さが出るのが現時点での課題で、ここを直せば将来もっと素晴らしい投手になります。

 直球と変化球の腕の振りの違いという点では、西君が吉田君より勝っています。それが、スライダーとカーブのキレの良さを生み、バッターの打ちづらさになっていました。好投してきた大きな理由です。あとは、西君が最上級生になってどう過ごしていくか。藤原君はいなくなります。今度は、自分が藤原君のような周りを引っ張る存在、役割になります。その中でどこまで成長するか、楽しみですね」

 甲子園を沸かせた右腕が、スケールアップして聖地に戻ってくることを期待したいところだ。

(Full-Count編集部)

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