不用意な四死球、押し出しはなぜ起こる? プロの目で原因を探る

ドラマチックな「押し出し」を何度も経験した鷹・五十嵐

「押し出し」と聞いて名前が上がるのはソフトバンク五十嵐亮太。

 いろいろな意味で伝説となったのは2014年9月25日、楽天戦。7回表、6-4の2点リード、1死一、二塁でマウンドに上がった五十嵐は3連続四球で逆転を許し、その後も2四球を与える。結局、この日、五十嵐は1/3回41球を投げて押し出しだけで4点を献上した。

 そして16年7月30日の日本ハム戦。9回1死で登板したが2四球の後、死球でサヨナラ押し出し。記憶に新しい18年7月27日の楽天戦はソフトバンク投手陣が10死四球を出す大乱調。試合を決めたのは、7回に出した五十嵐の押し出し四球であった。

 最年長としてチームを引っ張っているが、同時にいろいろな意味でドラマチックな試合を演出してきた。

「覚えていますよ、忘れるわけがない。でもその日の原因が何だったのかを断定できることはできないと思う。いろいろな要因が絡んでいることもあるし……。でも僕がマウンドに上がるのは、チームの勝ちがかかっている場面だから……。何を言っても言い訳になってしまう」

「押し出しだけじゃなく、四球や死球を出してしまう原因は、技術、メンタルの両方ともある。マウンド上でいきなり球がばらついて、ストライクが入らなくなることがある。こういう時は技術的に問題がある。バランスが崩れていたり、力が入ってしまったり。いつも投げているのとは違った部分があるからそうなる。それに故障の前兆の場合もあるから、そういう時は特に注意が必要」

「メンタルの場合もある。でもそういう時には、だいたい追い込まれていることが多い。自信がある球を投げても打ち取れない。これで打ち取れる、と思って自信を持って投げてもファウルなどで逃げられる。そうするとどうしてもストライクゾーンから外に投げるようになってしまう。次第にカウントが悪くなって四球になってしまう」

 思い出したくない過去であるが、四死球を出す際の様子を振り返ってくれた。

 ストライクゾーンの使い方を挙げたのは、オリックス鈴木郁洋バッテリーコーチ。中日、近鉄、オリックスと捕手をやってきた鈴木曰く、リーグによる配球の違いも存在し、それによって四球や死球が多くなってしまう投手も存在するという。

「どっちが良いというわけではなく、セ・リーグとパ・リーグは配球が少し異なる。僕の印象では、セ・リーグはストライクゾーンの中でどんどん勝負する。パ・リーグはその逆というのかな。セ・リーグの打者はゾーン内は確実に打ってくる。だから必然的にボール球を使うようになる。逆にパ・リーグの打者はゾーンの外を打つのが巧い打者も多いから、思い切ってゾーン内での勝負が増える傾向にある」 

「よくパ・リーグは真っ向勝負というけど、力と力の勝負ということだけではない。ゾーンの外を打たれてしまうから、ゾーンの中に力のある球を投げないと打ち取れなくなってしまう場合も多い。逆にセ・リーグはゾーンの外へ落としたりする変化球などを巧く使わないと打ち取れないことも多い。その辺のイメージがあるのでしょう」

「もちろん良い打者というのはゾーンもコースも関係ない。例えばイチローがオリックス時代にワンバウンドをヒットした。あれなんて極端だけど良い例ですよね。まあ、ゾーンの外もうまく拾われて、ゾーンの中も打ち返されたら抑えようがないですけどね」

ベテランでも球場の雰囲気に飲み込まれてしまうことも

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