西武の強さが球界を変える? 若き主力が支える国産打線と「緻密な」破壊力

豪快な一発が目につくが、効率の良さが得点力のカギ

 自身初の本塁打王獲得をほぼ確実としている4番の山川を筆頭に、今季の西武打線は長打力が際立っている。しかし、意外にもチームの総本塁打数はソフトバンクとほぼ同等の193本(ソフトバンク192本)。ただ、チームの総得点数は西武の773点に対してソフトバンクが642点と、実に131点もの差がついている。

 なぜここまでの差があるのか。まず、得点に直結する数字の中で目を引くのが、両チームの出塁率だ。西武の.352に対してソフトバンクは.326。打率は西武の.273に対してソフトバンクが.267とそこまで大きな差はないだけに、これがチャンスの差となり、ひいてはチーム総得点の差にもつながっている可能性は決して低くはないだろう。

 加えて盗塁数も、西武の128個に対し、ソフトバンクは78個という大きな差。ただ、得点圏に走者を送る手段として、盗塁と並んで重用される方法としては犠打があるが、今季の西武はその犠打は極端に少ない。わずか47犠打で、ワースト2位の楽天(75個)と比べるとその少なさがさらに際立つ。

 対するソフトバンクは、故障で主力打者が多数抜けた影響もあってかリーグ3位の99犠打を記録しているが、チームの総得点に大きな差がついているのは先述の通り。犠打数トップのオリックス(117個)の得点数は下から3番目(532点)、犠打数2位のロッテ(107個)は同2番目(511点)と、それぞれ伸び悩んでいることを考えれば、「送りバントは得点効率を下げる」という言説が、年を経るごとに広まりを見せつつあることも頷ける。

 ちなみに、西武はここまでチーム全体で挙げた742打点に対して得点は773点と、この2つの数字の間にリーグ最多となる31点もの差が生まれている。今季の西武は、相手のミスを実にしたたかにスコアにつなげているのだ。

 このように、西武が他チームを圧倒するほどの得点力を発揮できているのは、出塁率や盗塁数で差をつけていることに加えて、犠打を多用せず安易にアウトカウントを相手に与えないという効率的な攻めを、シーズンを通して行えていたこともひとつの要因と言えそうだ。

 出塁率の重要性、犠打の非効率さ、盗塁の収支ラインといったものはいずれも、セイバーメトリクスで提唱されているが、今季の西武がそれに基づいたかのような采配で得点を量産したのは、今後の野球界にある程度の影響を及ぼすかもしれない。

 何より、西武で規定打席に到達した6人のうち4人(森、外崎、源田、山川)が26歳以下と、まだまだ伸びしろを残しているところもまた楽しみな部分だ。「緻密な」打撃力でリーグを席巻した若獅子たちは、これからもさらに進化した姿を全国の野球ファンに見せつけてくれるだろう。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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