高い攻撃力で投手陣の脆弱性をカバー…データで今季を振り返る【西武編】

西武の各ポジションごとの得点力グラフ
西武の各ポジションごとの得点力グラフ

捕手・森の高い得点能力が攻撃力アップに貢献

 次に、西武の各ポジションの得点力が、両リーグ平均に比べてどれだけ優れているか(もしくは劣っているか)をグラフで示してみました。そして、その弱点をドラフトでどのように補ってみたのかを検証してみます。

 グラフは、野手はポジションごとのwRAA(平均的な打者が同じ打席数立った場合に比べて増やした得点を示す指標)、投手はRSAA(特定の投手が登板時に平均的な投手に比べてどの程度失点を防いでいるかを示す指標)を表しており、赤ならプラスで平均より高く、青ならマイナスで平均より低いことになります。

 今年の西武は、レフトとDH以外はプラス評価となっています。特に今季は森友哉が捕手として74試合に出場し、OPS.707、本塁打16と平均的な捕手よりも高い得点力を発揮したことが大きなアドバンテージとなりました。また一塁(山川穂高)、二塁(浅村栄斗)、センター(秋山翔吾)でも、大きなアドバンテージを得ています。

 それに対して、投手陣は先発、救援ともにマイナス評価となっています。本拠地メットライフドームのホームランパークファクターが1.30と、パ・リーグで最もホームランの出やすい球場というハンデはあるにせよ、被本塁打148はリーグワースト2位ですし、与四死球590もワースト2位、K/BB(奪三振/与四球比率)1.90はパ・リーグで唯一2以下という数値でリーグ最下位です。

 そこでこの弱点を埋めるべく、ドラフト会議では首都大学リーグに所属する日本体育大学で1年からエース級の活躍をし、2年春にはリーグMVPを獲得するなどで大学NO1投手として呼び声が高かった松本航を単独で1位指名しました。また、2位には地元浦和学院高校の大型右腕・渡辺勇太朗を、4位、6位に即戦力と目される投手を指名するなど、当面の弱点である投手補強に力を入れた指名と見受けられます。

 FAで二塁手の浅村栄斗の離脱が確定しました。捕手の炭谷銀仁朗も移籍する可能性が高いとされています。特にwRAAが30以上の浅村の攻撃力が、同一リーグの楽天に移動するというのは西武にとってかなりの痛手でしょう。当面はセカンドとして外崎修汰が起用されることになるのでしょうが、この事態を見越していたかのように、3位で三菱自動車岡崎のセカンド・山野辺翔、5位で遊学館高の捕手・牧野翔矢を指名しています。現時点の戦力不足を補うという意味では、意義のあるドラフトと言えるでしょう。

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。コミュニティサイト「鳥越規央のデータ野球部」を開設。
https://butaiura.fan/community/torigoenorio/

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