ホークス和田、減りゆく“松坂世代”への思い 3億円減でも「感謝」と言えるワケ

契約更改に臨んだソフトバンク・和田毅【写真:藤浦一都】
契約更改に臨んだソフトバンク・和田毅【写真:藤浦一都】

「現役を続けたくても、契約してもらえない選手がいる」

 突きつけられた数字は大きなものだった。18日、ヤフオクドーム内の球団事務所で契約更改交渉を行ったソフトバンクの和田毅投手。今季は左肩痛の影響で1軍登板なしに終わった左腕に球団が提示したのは、今季の年俸4億円から、野球協約で定められた減額制限(1億円以上は40%)を遥かに超える、75%ダウンとなる1億円。それでも、和田は「契約してもらえることに感謝しかないです」とサインした(金額は推定)。

 カブスから自由契約となり、2016年から古巣のホークスへと3年契約で復帰した和田。復帰1年目は15勝をマークし、最多勝と最高勝率のタイトルを獲得したが、昨季は左肘の手術などでわずか8試合の登板に終わり、今季は開幕前からの左肩の痛みで1軍のマウンドに上がることはなかった。

「3年間の間で働いた1年くらい。申し訳ありませんでしたという話を球団とはしました」。3億円ダウンは球団史上最大の下げ幅。12球団で見渡しても、歴代3番目の下がり幅での契約更改となった。それでも、3年契約が終わり、新たに契約を提示してもらえたことを、和田はありがたく感じた。

 大幅なダウンでも「感謝」と言った和田。そう思えるのには、同世代である“松坂世代”の存在も理由の1つだった。

 世代の象徴である中日・松坂大輔が復活を遂げた一方で、数多くの“松坂世代”が今季で現役を退く決断を下した。昨オフに巨人を退団した村田修一をはじめ、かつて和田とチームメートだった巨人の杉内俊哉、DeNAの後藤武敏、オリックスの小谷野栄一、日本ハムの矢野謙次、そして中日の工藤隆人と、一度に6人の盟友たちがユニホームを脱いだ。NPBで現役を続けるのは、残り8人となった。

 和田自身も、契約更改後の会見で「(引退が)頭をよぎってはいた」と率直な思いを明かした。その中でも現役への思いが途切れなかったのは、やはりこの同世代の存在が大きかった。

「同世代がどんどん引退していく姿を見るのは辛いです。その中で球団が期待してくれていると言ってくれたので。同級生は今年、特に引退する選手が多かったですけど、自分は復活して投げられるようになりたいという思いが強かった。現役を続けたくても、契約してもらえない選手がたくさんいるのに、何もしていなかった自分が契約してもらえるというのは感謝しかない。契約して欲しくても、してもらえない選手がいるので」

 期待してもらえることが、どれだけありがたいことか、和田は分かっている。だからこそ、その期待に応えたい思いが、そして、続けたくても続けられなかった盟友たちの分までという思いがある。

「大輔があれだけの怪我から復活して投げている姿を見て勇気付けられました。なんとか自分も元のようになげられるようになりたいと思いましたし、来年投げられるようにという気持ちが衰えることはないです」。今季、移籍した中日で6勝をマークした松坂にも、大きな刺激をもらったという和田。“松坂世代”の火を絶やさぬためにも、和田毅は2019年の復活を目指す。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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