イチロー、メジャー19年目キャンプイン「いつも期待を裏切りたい気持ちはある」

キャンプインを迎えたマリナーズ・イチロー【写真:田口有史】
キャンプインを迎えたマリナーズ・イチロー【写真:田口有史】

新打撃フォームで柵越え5本「僕にとっては大きな記念日」

 マリナーズのイチロー外野手が16日(日本時間17日)、米アリゾナ州ピオリアでメジャー19年目、プロ28年目のキャンプインをした。マイナー契約を結び、招待選手としてメジャーキャンプに参加。メジャーロースター入りを目指す45歳は、練習を終えた後で「イチロー選手と呼ばれるのは気持ちいいわね」としみじみと話した。

 冷たい風が吹くアリゾナで、イチローが躍動した。野手がキャンプインし、チーム全員が揃ったこの日。メジャー19年目のベテランは、約2時間半にわたり守備練習や打撃練習で汗を流した。周囲の視線が注がれたフリー打撃では、オフの間に改良した新打撃フォームを初披露。昨年と比べ、構えたバットのヘッドは投手方向へ傾き、少し沈めた膝は始動でさらに沈むのが特徴だ。この新型フォームで5本の柵越えを見せた。

 6年ぶりのマリナーズに復帰した昨季は、現地5月2日のアスレチックス戦を最後にメジャーロースターを外れ、「会長付特別補佐」としてチームを支えた。会見を行った同3日から、この日のキャンプインを目指していたのか問われると「それでいいと思います」とキッパリ。「会長付? 特別? 補佐? まあ形だけとは言え、距離はあるんですよ、どうしても」と当時を振り返ると同時に、選手として迎えたメジャー19度目のキャンプインを「ここにいる誰もそんなことは想像していないと思うけど、僕にとっては大きな記念日ですよ」と素直な喜びを明かした。

 慣れ親しんだキャンプ地に足を踏み入れ、選手として先を目指す思いにスイッチが入った。「日本でずっとトレーニングしていても、なかなか場所が変わらないと。それはこの場所に来ないと、出せないというかできない。想像はしていたけれども、イメージはしてきたつもりだけれども、この1日には敵わないという。だから練習でどれだけバット振っても1打席には敵わない。その感覚に近いかな」と、キャンプ地でチームのロゴが入った練習着を身にまとい、練習した時に感じる特別な感覚について説明した。

 会長付特別補佐というフロント入りを経験し、再び現役選手としてメジャーロースター入りを目指すのは、前例がないチャレンジだ。これまでも数々の偉大なる功績を残してきたベテランは「誰もやってきていないことに挑戦するということは、僕はいくつか結果としても残してきたことではある。でも、誰かがやったことがあることよりは、誰もやったことがないことの方に飛び込んでいくという選択になる。それは常々してきたつもりだし、今回もその1つ。ユニークだし特殊ではあるものの、その1つとして考えています」と動じず。さらに、こう続けた。

「比較の対象がないのでね、そんなに怖さはないです。ただ楽しいだけでもない。ただ、いつも期待を裏切りたいという気持ちはあります。この場合の期待も、どちらか捉え方によると思うんですけどね。それはやっぱり難しいと思うことを難しいと判断することも、本当は難しいんだけど、まあね、これは誰もやってないんだから。その判断というか、安易な責任のない意見かな、そういうものを裏切りたいと思っています」

 2001年にマリナーズ入りした時、メジャーでの活躍を疑う声を跳ね返して、史上2人目の新人王&MVPの同時受賞を果たした。あれから19年。現役続行に対して沸き上がる懐疑的な意見に対し、静かに「裏切りたい」という闘争心を燃やす。45歳ベテランが、前例のない挑戦に立ち向かう。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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