子供のなりたい職業上位に「YouTuber」にトクサン困惑 「あまりおすすめはしません」インタビュー【後編】

トクサンTV誕生秘話 最初はただインコースの打ち方を伝えただけだったがアクセス数急増

「ある時、僕がライパチに呼ばれました。そこへ行くと、インコースの打ち方を僕に聞くという動画を撮りたい、と。こっちは『えっ?』ってなりますよね。ヘッドが下がってしまうというので、『そもそも、肩とバットの角度が平行なら、ヘッドは寝ていない、と説明したら、その動画がはねまして(笑)。そういう動画が2、3回、続いたんです』

 もともとはライパチとトクサンTVにも登場する140キロの球を投げるプロデューサー的な存在「アニキ」が話をしながら、筋トレをする動画をアップする「ライパチTV」が母体となっていたが、野球の技術を教える動画にアクセスが殺到し、トクサンTVが生まれた。

「動画にいただけるコメントが楽しかったんです。『そんな練習方法、知らなかった』とか書き込んでくださった。それを見た時に、たまたま帝京高、創価大と高いレベルで野球を必死でくらいついたところに需要があるんだなと思いました。そこでしか学べない情報、練習法。僕にとっては当たりまえなことなんですけど。そこで目覚めた感じです。自分がやりたかったことにそのままとは言わないですが、野球を教えるのに『そういう角度(見方・やり方)があったなと思いました』

 トクサンは野球の伝道師として、新たな活路を見出した。

 教員ではなく、映像制作への道を歩み、始めた。IT関連企業の会社員となり、企業のPR動画、WEBCMの現場でカメラ回したり、アシスタントしたりするなど、映像を学んだ。

 そこで野球YouTube「トクサンTV」も業務の中でやることになり、現在に至る。今ではトクサンTVにかかる比重が多くなっている。映像制作の下積みも経験しているから、権利関係や、肖像権などには敏感で、野球界でもマナーやモラルを持って、活動している。

 今では子供たちからも大人気のトクサン。YouTuberになりたい子供が増えていることにうれしさもあるが、戸惑いもある。

「基本的にはおすすめはしていません(笑)。小、中学校や大学でYouTuberとしての講義のようなものをやりました。なりたい人は思い切りやっていいですが、もっと素晴らしい職業は山ほどあるので……。YouTubeは自己満足の動画は上げられますが、人に求められなければ見られません。ただ、人気者になりたいからYouTuberになりたいという考えならばやめておいた方がいいよ、って言いたいですね。今、人気のYouTuberの方も楽して、なっているわけではないので。僕が教えるというのは、おこがましいですけど、野球の面白さ、緊張感、醍醐味を伝えていきたいなと思って、配信しています。自分が草野球でヒット打った映像は今見ても、何も面白くありませんからね」。

 野球をまだまだうまくなりたいと思う人のために、自分の経験を伝えていく。

トクサン プロフィール
本名・徳田正憲 1985年3月18日、東京都大田区出身。34歳。小学校3年の時にソフトボールを始める。帝京高、創価大で野球を続ける。卒業後は一般企業に就職しながら、クラブチームで野球を続けるなど、今でも草野球へ情熱を燃やしている。2016年に始めたYouTube「トクサンTV」が大ヒット。チャンネル登録数39万人。再生回数は2億3000万回を突破。3月4日に著書「トクサンTVが教える新・バッティング講座」を発売。
好きな食べ物は、ハンバーグと小籠包。好きな選手は仁志敏久(元巨人)、源田壮亮(西武)

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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