開幕8試合で7勝1敗 開幕ダッシュを見せるマリナーズに生まれた「無形の力」とは…

マリナーズのダニエル・ボーゲルバック(左)と菊池雄星【写真:Getty Images】
マリナーズのダニエル・ボーゲルバック(左)と菊池雄星【写真:Getty Images】

ボーゲルバックが語る「選手同士の結び付きを強くしてくれたし、皆の距離感が縮まった」

 マリナーズは2日(日本時間3日)、本拠地でのエンゼルス戦で接戦を制して4連勝とした。3月21日に東京ドームで迎えた開幕戦から8戦で7勝1敗。直近の2009年を含めて過去に5度あった球団記録を更新するスタートダッシュを切った。

 球団史に新たな記録を刻む勝利に貢献したのが、前日に菊池のブルペンで打席に立ち、死球を受けたダニエル・ボーゲルバックだった。同点の8回、2ボール2ストライクからの5球目、外寄りの速球を捉えた打球は、T-モバイルパークの最深部、中堅左のフェンスを越えた。1打席目には右中間二塁打を放ち、3打数2安打と気を吐いた26歳は試合後、前日の“ハプニング”について再び水を向けられた。

「あぁ、もうなんの問題もないよ。ユウセイはとてもいいやつだしね。チームメート全員が彼と一緒にプレーできることを喜んでいるし、彼がいるクラブハウスに来るのを毎日楽しみにしているんだ」

 英語を自由に操り気さくなキャラで早くもチームに溶け込む左腕から、抜けた直球を右腰に受けたボーゲルバック。歩み寄る菊池をまるで無視するかのように無言で立ち去っていったが、菊池からの謝罪までにはすでに気持ちは収まっていた。 

 その彼が、イチロー引退の花道を飾った東京開催の開幕シリーズがチームの快進撃に好影響を与えていると分析している。

「(日本での経験は)とても大きなこと。選手同士の結び付きを強くしてくれたし、皆の距離感が縮まったと僕は思っている。こういう状態は勝つための一つの理由になるというのが僕の考え。まだ始まったばかりだけど、シーズンずっとこの状態が続いていくかどうかを思うと、ちょっとワクワクするね」

 昨季まで打線の看板だったカノ(メッツ)、クルーズ(ツインズ)がトレードとFAで抜け、日々のスタメンはブルースやエンカーナシオン、サンタナなど新加入の選手が半分以上を占める。上手く機能するかどうか未知数だった打線に「無形の力」をもたらしたのが、イチローの存在だったとボーゲルバックは暗示する。

 日々のルーティンから道具に対する扱いまで、野球に対してフィールド内外で真摯に取り組んだイチローの姿は各選手の眼に焼き付き、野球愛に溢れた偉大な選手の引き際を異国の地で最後まで温かく見守れたことが絆を深め結束力を生み、チームを一つにした。プレシーズンマッチの巨人戦を含め、イチローとともに戦った東京での戦いがこれほどの効果をもたらすとは、キャンプの段階では誰も想像できなかった。

 ここまでの8試合の総得点は「56」。1試合平均7点を叩き出す活発な打線が白星に牽引している。しかし、この日は先発左腕ゴンザレスが9回1死までエ軍打線を1点に抑える粘りの投球で勝機を作った。殊勲打のボーゲルバックも「今夜はマルコ(ゴンザレス)に尽きるね。初回から驚くような投球を続けた」と脱帽。勝利への執念が投打に見えてきたのは大きな収穫だった。

 主軸のエンカ―ナシオンが左手首の痛みから急きょ出場を回避したことで、指名打者として今季2度目のスタメン出場を果たしたボーゲルバック。その活躍にサービス監督は「みんなの準備はいつもできている」と胸を張る。

 米国初の遠征地シカゴが悪天候の予報から初戦の順延が、3日(日本時間4日)早々に決定。菊池の登板もそのままスライドし5日(同6日)に変更。菊池はこのチーム一丸の追い風を受け ホワイトソックス相手にメジャー初勝利を目指す。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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