米レンジャーズでコーチ留学中 日本ハム・矢野謙次特命コーチの今

レンジャーズでコーチ留学をしている日本ハムチーム統轄本部特命コーチ・矢野謙次氏【写真:佐藤直子】
レンジャーズでコーチ留学をしている日本ハムチーム統轄本部特命コーチ・矢野謙次氏【写真:佐藤直子】

マイナー配属予定もワカマツ氏の配慮でメジャーに同行

 4月某日。レンジャーズのクラブハウスに出掛けると、そこには元日本ハムのクリス・マーティン投手がいた。かつて、ダルビッシュ有投手(現カブス)が使っていたロッカーの前で、全体練習までの時間をくつろぐ右腕の横に、やはり日本で見慣れた顔がある。昨季限りで現役を引退した矢野謙次氏だった。今季から日本ハムのチーム統轄本部特命コーチに就任し、現在はレンジャーズにコーチ留学中。早くもレンジャーズのユニホーム姿は板につき、持ち前の明るさも相まってチームでは「ケンジ」と親しまれている。

「これまで話にしか聞いたことがなかったメジャーやマイナーは、実際どういう場所なのか、自分の目で確かめ、経験してみたかったんです。どんな練習をしているのか、どんな野球をしているのか、監督・コーチと選手はどういう関係なのか。百聞は一見にしかずですから。スプリングトレーニングから本当にいい経験をさせてもらっています」

 スプリングトレーニングが始まる2月からレンジャーズに派遣された矢野氏は当初、傘下マイナーでコーチ経験を積む予定だったが、「ベンチコーチを務めるドン・ワカマツさんの口添えで、幸運にもメジャーに同行させてもらえることになりました」。日系4世のワカマツ氏は、2009年から10年途中までマリナーズ監督を務めた人物で、今春には日本ハムのアリゾナ春季キャンプを訪問し、栗山英樹監督と交流を深めた。

 そのワカマツ氏やジョン・ダニエルズGM、ジョシュ・ボイドGM補佐、クリス・ウッドワード監督ら、レンジャーズ首脳陣の全面協力を受けながら、スプリングトレーニング中は午前はメジャーキャンプ、午後はマイナーキャンプに参加。米国流をつぶさに観察し、とにかく体験したという。日本ではプロ16年の実績を持つ元選手だが、「コーチ、指導者としては、まだ駆け出しの1年目ですから」と学べることは全て学ぼうという貪欲な姿勢を隠さない。今季でメジャー15年目となる秋信守外野手は、2歳上の矢野を「ケンジサン」と呼び、「謙虚に学ぼうという姿勢は頭が下がる」と称える。

 コーチ留学を始めて約2か月。全体練習では率先して球拾いを行うなど、選手の練習環境を整える黒子に徹しながら、自分の目で見て、肌で感じたことは、とても新鮮だった。

「監督・コーチと選手の関係は、決して上下で成り立っているのではなく、ほぼ対等で風通しがいい。上から怒鳴り散らすことはないから、選手はミスを恐れずに伸び伸びとプレーしている印象があります。こちらでは下積みが長く、メジャーであまり実績のなかった選手が指導者となるケースが多い。特にマイナーでは、選手がどうやったら大きく成長できるかを考えながら、コーチが指導していますね」

米国指導者に重なった大学時代の恩師の姿

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