開幕から好調を支える“献身性” 大引啓次が考える勝つために求められる「姿勢」

試合には「常時出たい」でも…チームの中には役割がある

プロ13年目、今やベテランの域に達した。しかし大学時代首位打者2度の打撃技術、そして勝負強さは健在である。実際18年は故障などで47試合出場と出番は少なかったが、打率.350、15打点を挙げた。

「もちろん選手として目指しているのは、レギュラーで常時試合に出ることです。これは野球を始めた時から一貫して変わりません。でもチームの中には役割というものもある。そういう意味でも首脳陣の意図をしっかりと受け取って、それに応えることが一番重要だと思います」

「ポジション的には三塁なのでしょうが、伸び盛りの村上宗隆がいる。チームとしては村上を使って将来の主砲に育てたいというのもわかる。ファンの皆さんも村上を見たいと思っているのもわかる。僕自身も村上の本塁打みたいですからね。でも、やっぱり試合には出たい。負けないように自分のコンディションを高めて出場できるようにしたい。その気持ちは変わらない」

 大引本人から村上の名前が出た。メディアを含め、将来の看板選手として誰もが期待しているのはわかっている。そんな状況下でもこの男は変わらない。チームの勝利ためならばなんでもする、という気持ちが上回るのだろう。

「野球選手としてずっと試合に出たいというエゴはあります。でもそれがなくなったらダメだと思う。試合に出たい、少しでも上手くなりたい、という気持ちが薄らいだ時は辞める時だと思う。だから僕はまだまだ負けないですよ」

 現状、常時試合に出続けている選手ではない。しかしファン人気も高く、代打などで登場した時の歓声は一際大きい。

 献身性。忠誠心。

 口で言うのは難しすぎることを、この男は常にこなしている。そういう部分に、誰もが惹きつけられるのだろう。

「そんな大げさなものではないですよ」

 最後にそう言うと、試合前練習を終えたばかりの大粒の汗を流しながらクラブハウスに入っていった。

(山岡則夫 / Norio Yamaoka)

山岡則夫 プロフィール
 1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。

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