パ最強の強肩捕手は? 二塁送球タイムトップ5は鷹・甲斐が4位まで独占

4位以上は甲斐が続々と…

 続いて4位は「甲斐キャノン」の御本家である甲斐の1秒85だ。さすがに本家は今年もいいタイムを出してくる。

 このタイムのときは、甲斐にとっては比較的投げやすい条件だったと思われる。マウンドの武田翔太のクイックも素早かったうえに、打席は左打者の秋山翔吾外野手(西武)で、投球は外角に大きく外れたストレートだった。これなら見通しも良く、空間的に何も気することなく送球動作をすることができる。

 投げたコースも絶妙だった。二塁ベースの中心からわずかに一塁側に寄った直上50センチあたりのところだろうか。ショートの今宮健太内野手は捕球した勢いを生かしてそのままグラブを落としただけ。そこに一塁走者・金子侑(西武)のスライディングした際の足がきて、行く手をふさいだ格好だ。

 好条件もあってほぼ完璧な盗塁阻止。それにしても、刺されたのがまたもや金子侑とは。捕手が甲斐では、さすがに相手が悪かったか。

 そして、3位はまたもや甲斐である。タイムは1秒82とさらに縮めてきた。

 実をいうと、今度は4位のときよりも条件は良くなかった。まず、投球が低めの変化球だったこと。わずかな違いではあるが、ストレートよりも球速が遅いため、これだけでも若干タイムをロスする。さらに、地面スレスレの高さの球を投手方向にステップしながら拾い上げるように捕球したことで、勢い余ってバランスを崩してもおかしくない状況だった。

 ところが、甲斐はそこを踏みとどまって、ごく普通に近い形で強いスローイングにつなげている。このあたりは単に肩が強いだけではない。強靭な下半身によるリカバリー能力によっても、甲斐の送球の正確性が支えられていることがうかがえるシーンだった。

 送球自体も4位のときとほぼ同じく、二塁ベースやや一塁側膝元あたりのこれ以上ないところへ。今宮が捕球したグラブを真下に落としたところに一塁走者・西浦颯大外野手(オリックス)がスライディングした足が丁度きたころまで、デジャヴのように再現されていた。

 困った。2位も甲斐である。しかも、タイムは1秒77。ついに1秒70台に突入してしまった。しかも、刺したのは、昨年47度盗塁を試みて44度成功という驚異的な盗塁成功率.936を誇る西川遥輝外野手(日本ハム)。「甲斐キャノン」恐るべしだ。

 ただ、このときは条件的に甲斐に分があった。まず、投手が左のモイネロだったこと。さらに、投球は真ん中高めのストレートで捕球しやすく、打者・大田泰示外野手(日本ハム)は右打者のうえ空振りもしていないので、なにも邪魔になるものがなかった。これならば、ベストに近い動作ができても不思議はない。

 かくして、パ・リーグを……いや、日本を代表する韋駄天の西川をラクに刺すことができた。しかし、これも甲斐の送球がストライクにきたからこそという部分はある。3位と4位のときに比べると、やや二塁ベース真ん中寄りだったが、十分タッチのしやすいところだった。

 これがたとえば、頭の上の付近に少し高くいっただけでも、タッチは0秒10くらいは遅れてしまう。そうなっていれば、西川はおそらくセーフだったはず。現在のプロ野球の二塁盗塁といのは、そのくらいシビアな世界ということだ。

 今後、甲斐に負けないくらいの強肩捕手が登場して、同じようなタイムを出したとしても、制球力について吟味しなければ正しい評価は下すことはできないだろう。まさに、「甲斐キャノン」だからこそ刺すことができた。そう言える送球だ。

番外編は緊急捕手・銀次の「銀次キャノン」、1位は驚異のタイム

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