国公立大進学なら教師に―高校で野球をやめようと思った西武本田の不思議な“縁”

4年目で好調の理由「ちょっと時間が空いてしまったけど、やっとわかりました」

「『自分の武器は何だろう。自分の特徴は何だろう』と考えていましたが、見つけられませんでした。U-23では、かわしていいピッチングができたのですが、日本人は対応力あるバッターばかりなので、自分の持ち味を発揮できませんでした」

 ブルペンでは腕が思い通りに振れているのに、試合になると力が入りフォームがばらけてしまった。昨年8月に2軍に降格してからは、試合でもフォームが維持できるように繰り返し練習した。

「オフには台湾でのウインターリーグに参加して、いい状態で今年のキャンプに入れました。でも、今年初めての対外試合でまたダメでした。練習で投げている球と、試合で投げている球が明らかに違うのを痛感しました。何でダメだったんだろうと考え、気持ちの問題なのかなと思いました。それで、U-23で結果を残していた時のことを思い出しました」

 U-23の時は楽しんで投げることができたが、結果に目が行ってしまい、楽しく投げることができなくなっていた。勝負を楽しんでいる時は自分の力を発揮でき、ベストな状態で投げられていた。それに気が付いたことが、プロ初勝利につながった。

「ちょっと時間が空いてしまったけど、やっとわかりました。3年間チャンスをいただいたのに勝てなかった。辻監督も使ってくれていたのに、期待を裏切っていました。試合を見に来てくれる両親や、応援してくれる人もたくさんいる。いろんな人たちに勝ちを届けたかった。なんとか勝ちたいという思いで投げました」

 今は、ずっと見つけられなかった自分の武器、そして、自分がどういう投手になるべきかが見えてきた。

「コントロール、緩急のあるピッチングを伸ばそうと思ってやっています。目指すのは、常に安定して試合を作れるピッチャーです。完璧に投げられる圧倒的な力は持っていないので『グッド』くらいの安定したピッチングを続けられるようになりたいと思っています」

 勉強がうまくいかず、国公立大への進学を断念。自分の実力ではプロ入りも無理だと思っていた。結果がついてこないと自信が持てず、投げることを楽しめなかった。「諦めてばっかりでしたね」と苦笑いを浮かべる26歳の右腕は、「初勝利」という結果を自信に変え、投げることを楽しみながらマウンドに上がる。

(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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